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2012年2月28日(火)

主張

受診手遅れ死

命救わぬ国保の異常をただせ

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 昨年2月、埼玉県内の病院に54歳の男性が運び込まれました。苦しい呼吸に耐えられず自ら救急車を呼んだのです。結核の疑いがあり専門病院に転院、しかし8日後に息を引き取りました。無収入で保険証も持っておらず、我慢し続け、病状を悪化させたのでした。

 お金がなく病院にかかることができず命を失う悲劇が各地で後を絶ちません。「金の切れ目が命の切れ目」とはなんと非情な社会でしょうか。こんな現実は一刻も早く打開しなければなりません。

機能不全の「国民皆保険」

 全日本民主医療機関連合会が実施した調査では、経済的理由から受診手遅れとなり死亡した人は昨年1年で67人にのぼりました。調査は全日本民医連の医療機関で判明した「氷山の一角」であり、全国で5500人に達すると推計される深刻な事態です。「保険証1枚で誰もがどこでも医療を受けることができる」という「国民皆保険」の仕組みが機能不全に陥っている現実を突きつけています。

 職を失い「無保険」になったり、国民健康保険料(税)の滞納で窓口10割負担となる資格証明書などに切り替えられたりした結果、命を落とすケースが多発していることがとりわけ重大です。被用者保険に入っていない国民すべてをカバーすることで「皆保険の最後の砦(とりで)」のはずの市町村国保がその役割を果たさず、お金のない人を医療から排除しているのです。

 最大の要因は保険料(税)の高騰です。年所得200万円の4人家族で年30万〜40万円などの過酷な負担を強いられ住民は悲鳴を上げています。払いきれず滞納する世帯は全国で414万5千世帯と加入世帯の2割以上になり、資格証明書は29万6千世帯に、有効期限が短い短期証は125万5千世帯に発行されています。滞納世帯への事情を無視した預貯金など資産差し押さえは増加する一方です。

 「社会保障及び国民保健の向上に寄与する」(国保法第1条)目的とは完全に逆行する国保危機を生み出した元凶は、歴代政府による国庫負担削減です。1980年代には約50%あった国保総収入に占める国庫負担割合は、いまでは25%以下に激減しました。住民と自治体に負担と犠牲を押し付け、国保を危機的な状況に追い込んできている国の責任放棄は、これ以上許されません。直ちに国庫負担を増額に転じ、元に戻すことが必要です。

 ところが民主党政権は、国庫補助をさらに削減する国保法改悪案を開会中の通常国会に提出しました。市町村の国保を都道府県単位に統合する「広域化」計画も公費負担を減らす仕組みづくりにほかなりません。住民にさらなる負担増を迫り、国保崩壊を一段と加速させる改悪は中止すべきです。

国の責任で1万円下げを

 日本共産党は、消費税増税に反対し、社会保障の充実・再生を求める「提言」で、当面、国の責任で国保料(税)を年間1人1万円引き下げる負担軽減、保険証の取り上げ中止を緊急課題として打ち出しました。医療費窓口3割負担の2割への引き下げも待ったなしです。医療制度の機能不全によって、「助かったはずの命」が失われることなどがあっていいはずがありません。「お金の格差」が「命の格差」につながる冷たい政治を転換することは急務です。


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