2011年12月13日(火)
きょうの潮流
古くは焼け跡から、団塊、しらけ、バブル、氷河期…。世代を形容する言葉があります。これまでとは異なる感性や価値観をもってふるまう、時々の若者を指すときにも使われてきました▼世代間の定義には異論もあります。たとえば、最近の「ゆとり世代」。学習指導要領の改定が由来ですが、昨今のきびしい就職難にさらされ、言葉との格差にがく然とする若者は多い。なかには「ゆとり世代は常識がない」と中傷された、ひどい話もあります▼1980年代、「新人類」と呼ばれた若者たちがいます。その代表の一人、プロ野球の工藤公康投手(48)が先日引退を表明しました。通算224勝、1軍のマウンドに29年間も立ち続けた模範投手も、新人当時は「やんちゃ坊主」で通っていたといいます▼物おじしない態度、インタビューでは笑いをとり、ふだんはブランド服をラフに着こなす。“球界の常識”を破る言動に、先輩らは戸惑いや皮肉もこめて「新」をつけました▼そんな注目をよそに、工藤投手は次々と実績をあげていきます。体づくりをふくめ、長い間、第一線で活躍する姿は若手の手本に。本人も「自分を変えられると信じること。自分にも必ずできると信じること」(『探究力。』)とメッセージを送っています▼世代を区切ることで、互いへの無理解や断絶を正当化する向きもみえます。しかし、同じ社会に一緒に暮らす仲間。刺激しあい、協力しあい、手を携えていく。未曽有の大震災に襲われた今年の漢字は「絆」です。