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2011年12月6日(火)

主張

八ツ場ダム

虚構の検証で続行するな

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 長年にわたって中止か継続かが議論されてきた八ツ場(やんば)ダム事業(群馬県長野原町)を検証してきた国土交通省関東地方整備局が「事業継続は妥当」との報告書をまとめ、国交省の有識者会議がそれを追認するなど継続へ向けた動きが加速しています。

 民主党への政権交代後、「できるだけダムにたよらない治水」などのうたい文句で始まった検証でしたが、手法も内容も「結論先にありき」のアリバイづくりの色合いが濃厚です。前田武志国交相は年内に最終判断するとしています。こんな検証作業を根拠に結論を出すことは許されません。

地すべり危険地域

 1952年に計画が発表された八ツ場ダムは、利根川上流の吾妻(あがつま)渓谷に治水・利水を目的にしたダム建設をするという国直轄事業です。約4600億円もの巨額な国費を投じる計画で、さらに膨れ上がるという指摘もあります。住居移転や道路整備など周辺事業は始まりましたが、本体工事は着手されておらず、「無駄な公共事業の典型」と批判されてきました。

 検証は、2009年に発足した民主党政権の前原誠司国交相(当時)が本体工事の「中止」を表明したことから始まったものです。八ツ場ダムについては、治水・利水の両面で「必要のないダム」と指摘されてきました。検証作業は、まともなデータに基づく検証からほど遠いものです。

 治水の面では、八ツ場ダムをつくれば洪水被害対策効果が6倍以上になるなどという試算をはじきだしました。しかし、被害想定の数字そのものが水増しされた数字であり、とても根拠になりえないものです。利水についても、首都圏全体の水需要は減少傾向にあるのに、増加するという推計をもとにダムの必要性を強調しました。それどころか、静岡県の富士川水系からの水を首都圏に引くという実現不可能な対案まで持ち出し、それと比べて八ツ場ダムは「費用が安くなる」などという強引な結論を導きだしてます。

 吾妻渓谷は浅間山の噴火で生まれたもろい地層で、ダム建設予定地は「地すべりのデパート」といわれるほどです。にもかかわらず、その危険性は考慮されませんでした。こんな虚構の上に立った検証結果で事業続行にゴーサインを出し、無駄な公共事業をすすめることは、国民の願いに背くものです。

 もともと前原国交相の突然の「中止」表明には、ダムにかわる治水・利水の理念がまったくありませんでした。ダム建設を推進する国交省に検証作業を「丸投げ」したことや、ダム建設に批判的な研究者らを排除した有識者会議の設置は、中止のためではなく、継続のための時間かせぎと批判されたのも当然です。

生活再建に力を注げ

 ダムをめぐって苦しめられたのは地元の人たちです。計画発表から60年、ダムに翻弄(ほんろう)されてきた住民に心を寄せ、計画を中止すべきです。ダムをはじめとする大型公共事業のあり方が問われています。全国でもダムを見直す動きがすすんでいます。未来を見据えて、検証し直し、中止の方向を明確に打ち出すことが必要です。地元住民の生活再建事業をただちに具体化し、国が責任を持つべきです。将来に禍根を残さない住民本位の対策が求められています。


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