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2011年12月3日(土)

あの大富豪より負担が軽い?

トヨタ自動車社長の場合

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 アメリカの著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、8月のニューヨーク・タイムズ紙への寄稿文で、「富裕層に増税を」と主張しました。バフェット氏は、「昨年の自分の連邦税(所得税と給与税)は、課税所得の17・4%だった」として、その負担率が自分のオフィスの社員たちより低かったと言っています。日本の大企業の役員にも、そういう人はいるのでしょうか。

 日本有数の大企業といえば、必ず名前があがるトヨタ自動車。その社長の豊田章男氏の場合を推計してみましょう。

負担率16%

 昨年度のトヨタ自動車の有価証券報告書によると、豊田氏の年間報酬は、基本報酬が8400万円、賞与が2400万円、ストックオプション(新株予約権)が2700万円、あわせて1億3500万円となっています。また、豊田氏はトヨタ自動車創業家の一員であり、自社の株式を457万4000株も保有しています。昨年中の配当額は、一昨年度分の期末配当25円と、昨年度の中間配当20円、合計で45円でした。したがって、昨年中に豊田氏が受け取った配当は2億583万円という計算になります。

 ほかにも所得があるかどうかは不明ですが、とりあえず以上の収入について所得税を計算してみましょう。

 基本報酬と賞与は「給与所得」として最高税率40%の累進課税になりますが、配当は証券優遇税制が適用され、所得税だけだと7%の課税です。ストックオプションには現時点では課税されません(注1)。

 給与所得控除や社会保険料控除などを含めて計算すると、所得税は約5130万円となりました。これは豊田氏の年収の15・1%にすぎず、バフェット氏より低いということになります。

 もっとも、バフェット氏は「所得税」だけでなく「給与税」も含めて計算しているようです。アメリカの「給与税」とは、日本の年金保険料の事業主負担に相当します。もしかすると、社会保険料の本人負担分も含めているのかもしれません。

 そこで、豊田氏の場合も、所得税と社会保険料(労使相方分)を含めて計算してみました。この場合の負担額は約5438万円、年収に対する負担率は16%で、これでもバフェット氏より低いことが分かります(注2)。

一般社員は

 トヨタ自動車の一般社員はどうでしょう?

 有価証券報告書によると、トヨタ自動車の昨年度の正社員の平均年収は727万1090円となっています。保険料率などの仮定条件を置いて所得税を計算すると年間41万円、社会保険料(労使分)を含めると年間224万円という計算になりました。年収に対する負担率は30・7%となり、社長の負担率を大きく上回っています(注3)。

 オバマ米大統領は、「年収100万ドル(約8000万円)を超える富裕層の負担率が中間所得層より低くなるようなことを許さない」ということを「バフェット・ルール」と名付けて、税制改革の原則の一つとして掲げています。日本でも、税・社会保険料負担の逆立ちを改める「ルール」が必要なのではないでしょうか。(垣内亮 日本共産党政策委員会)

 (注1)ストックオプションとは、「将来、新株を安い価格で購入できる権利」のことです。これに対する課税は、新株を購入した時点、ないしはその株を売って売却益を得た時点で行われます。

 (注2)住民税まで含めれば、豊田氏の負担率は20.7%になりますが、バフェット氏も住民税を含めればもっと負担していると思われます。

 (注3)計算にあたっては、扶養家族はゼロとし、社員の賞与は給与の3カ月分と仮定。保険料率は医療と介護については「トヨタ自動車健康保険組合」のホームページのデータを利用、年金や雇用・労災保険については一般的な保険料率を適用して計算しています。なお、住民税も含めた一般社員の負担率は36.6%になりました。


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