2011年12月2日(金)
米国務長官 「新たな一章」
ミャンマー大統領と会談
【ハノイ=面川誠】クリントン米国務長官は1日午前、ミャンマーの首都ネピドーの大統領官邸でテイン・セイン大統領と会談しました。ロイター通信によると、同大統領はクリントン氏に対して、「歴史的な訪問は両国関係の新たな一章になるだろう」と述べました。
民主化加速求める
クリントン氏は「私もオバマ大統領も、あなたや政府が国民のために取ってきた措置に勇気付けられている」と語り、民主化と改革の加速に期待を表明しました。
クリントン氏は会談後、「率直で建設的な会談だった」と述べました。同氏は会談で、ミャンマー政府の措置を「支持する」と述べる一方で、「改革は始まったばかり」だと指摘。政治囚全員の釈放や、少数民族武装組織との和平実現を求めました。
それに対して米国が取る相応の措置として、駐在代表を大使に格上げすることや、人道的支援の拡大を提示しました。
また、北朝鮮からのミサイル技術導入は国連決議違反だとして、中止を要求。これに対してテイン・セイン大統領は国連決議順守を確約したといいます。
ミャンマー経済の再建に向けては、世界銀行や国際通貨基金(IMF)の調査団派遣を支援すると表明。米国によるベトナム、カンボジア、ラオス、タイ4カ国の支援枠組み「メコン下流域イニシアチブ」に、ミャンマーがオブザーバー参加するよう招待しました。
米国による経済制裁については、ミャンマーが進める政治・経済改革の進展を見極めて解除の是非を検討する考えを伝えました。
解説
東アジアに大きな影響
クリントン米国務長官のミャンマー訪問で、オバマ政権のアジア関与強化が一歩進みました。この訪問は米国だけでなく欧州諸国など経済制裁を科している国々とミャンマーの関係正常化への第一歩にもなり得ます。
豊富な資源を持ち、陸路流通の要衝であるミャンマーは、欧米諸国にとって魅力的な潜在的市場。一方のミャンマーにとっても、立ち遅れた経済の再建には欧米からの投資や国際金融機関の支援が不可欠です。
欧米の経済制裁が続く中、中国からの投資が突出したものの、国民生活の向上に結び付かず、国民の間では中国とミャンマー政府への不満が高まっていました。
ただ、欧米諸国との関係正常化には、全政治囚の釈放や、少数民族との和平実現など、解決すべき多くの課題があります。クリントン氏も「経済制裁解除を急がない」と言明しています。
ミャンマーと欧米諸国の関係改善は、東アジア全体にも大きな影響を及ぼします。インドネシアの外務省高官は、「欧米が経済制裁を解除し、ミャンマー経済が発展し始めれば、東アジアの人、物品、お金の流れは大きく変わる」と言います。
一方中国は、クリントン氏の訪問について、「ミャンマーの安定と発展に寄与すると期待している」(外務省報道官)と公式には歓迎。ただ中国共産党機関紙・人民日報が主管する環球時報紙は「中国はミャンマーが西側との関係改善を求めることに反対しないが、自らの利益が踏みにじられることは受け入れない」と警戒感を示しています。(ハノイ=面川誠)