2011年10月18日(火)「しんぶん赤旗」

主張

G20首脳会議へ

「反格差」の声が方向付ける


 「1%の人が99%の富を独占している」「私たちは99%だ」―。世界の金融センター、ニューヨークのウォール街で9月中旬、若者らがあげた「格差反対」の声が、1カ月間で世界中に広がりました。草の根のさまざまなデモ行動が15日、82カ国の951都市で行われたといいます。

 一握りの大企業による利益追求が大多数の人々に貧困をもたらし、人々の憤りをこれほど“グローバル化”させている現実に、衝撃と希望を覚えないではいられません。経済のあり方の抜本見直しはもはや待ったなしです。

銀行救済、欧州でも?

 抗議のさなかに、世界経済のかじをとる20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が開かれました。会議は、その直前にユーロ圏17カ国で最後まで残ったスロバキアが、欧州安定化基金(EFSF)の拡充策を受け入れたことで、大きな波乱なく終わりました。G20首脳会議(南仏カンヌで)を半月後に控え、重要な決定は首脳会議に委ねました。

 ギリシャから始まった財政危機はスペイン、ポルトガル、イタリアと南欧に広がり、欧州経済の動向が世界を揺さぶっています。ギリシャなどのデフォルト(債務不履行)とそれに伴う銀行の破綻への懸念に直面して、ユーロ圏諸国は既存のEFSFを拡充して、国債購入や銀行への資金注入に使えるようにしました。しかし、スロバキア議会が、負担増への国民の反対を背景に、拡充策受け入れをいったん否決したことは、予想されたとはいえ各国政府や金融機関の肝を冷やしたはずです。

 日本では1990年代末の「不良債権処理」に、米国では「リーマン・ショック」後の2008年に、銀行救済の公的資金投入が行われ、財政赤字を膨らませました。いま欧州でも銀行救済が行われようとしています。「投資家の懸念払拭(しょく)」がその引き金です。

 銀行救済のために国民に負担を転嫁するのは不当です。おまけに、ギリシャの財政危機の裏には米国一の投資銀行ゴールドマン・サックスによる隠ぺい工作がありました。投機の場と化した金融を規制することは、G20の大きな課題だったはずです。

 一方で、欧州はいま金融取引への新たな課税を検討しています。為替市場などを混乱させる投機目的の取引を抑えようとするものです。金融取引税の導入は、投機の危険が明らかになるたびに浮上しながら、実現しませんでした。

 世界的に導入しないと効果が薄いとされるなか、金融センターを抱える米国やイギリスなどが、投資が妨げられると主張して、反対してきたためです。しかし、今回は欧州連合(EU)が導入を目指し、カンヌでのG20首脳会議でも取り上げられるとみられます。

金融規制の強化こそ

 G20首脳会議はこれ以外にも金融規制を話し合う予定です。米国などの反対を抑えて金融規制を強めることは、広がる“格差反対”の声にも応えるものです。

 日本では歴代政権が大企業と銀行に甘い姿勢をとり続けています。東京電力が引き起こした重大事故の賠償でも、民主党政権は原発利益共同体の一員である大銀行を免罪しています。経済のあり方を転換するには政治の変革が不可欠なことを示しています。





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