2011年10月16日(日)「しんぶん赤旗」

「観閲式」輸送業者から金券

元空自幹部が本紙に告発


 航空自衛隊百里基地(茨城県)で実施した政府主催の航空観閲式(3年ごとに開催)をめぐって、元空自幹部が3年前に関連業務受注業者から金券を受け取っていた、と本紙に告発しました。防衛省は「事実なら許されない行為。事実関係を調査する」としています。(山本眞直)


 元幹部は「観閲式の受注業者から『御礼』だとして金券を渡された」と証言しました。

 観閲式には全国の空自部隊から要員を招集。元幹部は東北の有力基地から観閲式での輸送任務につきました。

「もらっておけ」

 「自分は受け取るべきではないと考え、上官に相談すると『もらっておけ』と押し付けられてしまった。これがそのときの金券だ」

 元幹部の手には墨痕鮮やかな「御礼」の文字と事業者名が記されたのし袋がありました。なかにはビール券(大びん2本)10枚が。

 「御礼」を持参した業者は言いました。「次回もまたお願いします」。のし袋は4セットあり、総数40枚のビール券は全て部隊幹部が受け取りました。

 対応した部隊長(3佐)は「自分は契約担当だから受け取れない。おまえたちがもらっておけばいい」。一見、毅然(きぜん)としているようですが結局、容認したのです。派遣元の部隊長(3佐)にも相談したらやはり「せっかくだからもらっとけ」。

 元幹部は「自分は部下に、国民に説明できないようなことは絶対にするなと教育してきた。派遣先や原隊の部隊長の業者との癒着を容認、助長する姿勢に強いショックを受けた」と唇をかみます。

 業者は茨城県内では最大手のバス会社。前回の観閲式で予行訓練(事前公開)と観閲式当日に、JR石岡駅から会場の百里基地まで招待客(7千人)を無料でピストン輸送するシャトルバスの運行を受注。元幹部によれば大型バス80台で発注額は約2千万円です。

今年も運行委託

 防衛省は16日に航空観閲式を予定、9日には予行訓練を実施しましたが、今回もこの業者にシャトルバスの運行を委託しています。防衛省によれば観閲式の予算は前回、今回とも約1億7千万円。ただ前回は「観閲式後も引き続き空自業務のために継続使用する物品のための経費を含めたことで総額は6億4千万円になった」としています。今回も同様な措置がとられるとの指摘があります。

 元幹部は、東北の実家が大震災で半壊し、東電原発事故の放射能汚染で自宅のある福島から隣接県に避難中です。金券(10枚)は弁護士を通じて業者に返送する、としたうえでこう結びました。「大震災、原発事故の復旧・復興、収束の見通しがたたないなか、国民の苦難を尻目に、自衛隊と招待客のための行事に莫大(ばくだい)な税金をかけるムダ遣い、根強い業者との癒着体質に一石を投じたかった」





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