2011年10月10日(月)「しんぶん赤旗」

ムバラク政権崩壊から8カ月

民主化の一方、後退も

エジプト


 【カイロ=伴安弘】エジプトのムバラク強権政権が広範な国民の民主化要求デモの前に2月11日に崩壊してから8カ月がたちます。国内ではこの間の民主化の進展を部分的に評価する一方、暫定軍事政権の統治の仕方がムバラク政権と変わりないとする見方があります。

批判記者を逮捕

 ムバラク時代との大きな違いは、制限があるとはいえ政党結成が自由になったことです。前政権下では政権与党・国民民主党(NDP)が新党の認可権を事実上握っていましたが、独立した判事らからなる委員会に許可・監視の権限が与えられました。イスラエルとの平和条約に反対することを新党に禁じていた法律の規定もなくなりました。26党だった政党は現在50以上に上っています。

 報道の自由、集会の自由も前進しています。しかし、全権を握る軍最高評議会は同評議会を批判する記者やブロガーを召喚し、時には逮捕しています。軍との協議なしの報道は許さないとの文書も出しています。

 3月24日にはストや抗議デモ、座り込み行動を犯罪視する「反スト法」を閣議決定。しかし、この決定は強い反対を受け、事実上適用されないでいます。

 この間、交通ストや教員ストが頻発しています。しかし、「1月25日革命」時の最低賃金の3倍化、1200ポンド(約1万6000円)への引き上げは実現していません。

市民を軍事裁判

 ムバラク政権が国民を恐怖に陥れながら、支配の道具に使った警察による拷問はなくなりました。しかし、悪名高い国家治安情報局(SSI)が3月に解散されて国家治安セクター(NSS)に衣替えした後、SSIの要員の25%がNSSに横滑りしたといいます。憲兵による拷問も明るみに出ています。

 人権状況について後退しているのが軍事裁判による一般市民の裁判です。人権団体によると、1万2000人の市民が一般の裁判から軍事裁判に移されました。ムバラク時代に軍事裁判にかけられたのは2000人を超えていませんでした。

非常事態令今も

 非常事態令の撤廃が「革命」の第一の要求でしたが、いまだに撤廃されないでいます。軍評議会のタンタウィ議長は選挙前には撤廃するとし、治安が回復すれば直ちに撤廃するとも述べています。しかし、治安は改善されるどころか悪化しています。

 「革命」の最中に警察が意図的に拘置所を明け渡したため武器を奪って逃走した犯罪人の殺人・強盗事件などが最近増えています。警察が「革命」への報復として犯罪を放置していることが、警察幹部の発言で明らかになっています。





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