2011年9月14日(水)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 遠藤未希さんの名前に、また出会えました。3月11日、最後まで町民に高台へ避難するようよびかけ、とうとう帰らなかった遠藤さん▼野田首相の所信表明の中に登場しました。「日本人の気高き精神」の持ち主として。「使命感」や「他者をいたわる人間同士の深い絆」を、身をもって示した人として。首相はこう説きました▼遠藤さんや助け合って耐えた被災者の姿に「日本人として生きていく誇り」「明日への希望」を見いだせる、と。たしかに、未来と希望を物語る遠藤さんの名は、日本の災害とのたたかいの歴史に刻まれるでしょう▼しかし、首相の演説をききながら疑問が募りました。では首相自身、遠藤さんや被災者の気持ちにどう応えていくつもりなのか。というのも、首相が考えている復興増税といい、環太平洋連携協定(TPP)への参加といい、被災地を苦しめると目に見えているからです▼いずれも、「他者をいたわる深い絆」の精神とは相いれません。「助け合い」を説くのなら、たとえば復興の財源づくりへ、金あまり大企業など財力の持ち主に「国難」に立ち向かう誇りある「使命感」を発揮してもらうのが先でしょう▼まさか野田首相、遠藤さんを引き合いに出して、被災地の人々に犠牲の精神をもつよう求めているのでは? 庶民増税を迫る財界やTPPを結びたい米政権・米企業のために、困難に耐えるのだ…。考えていなくても結果そうなれば、地域の住民を救おうとした遠藤未希さんの思いは浮かばれません。





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