2011年9月7日(水)「しんぶん赤旗」

先進国の財政緊縮政策

途上国の回復を失速

UNCTAD報告


 国連貿易開発会議(UNCTAD)は6日、「貿易開発報告2011」を発表し、先進工業国の大多数の政府が推進している財政緊縮政策が、発展途上国の経済回復を失速させていると批判しました。報告は現在の危機の根底には無責任な金融市場の自由化政策があると分析しています。(夏目雅至)


無責任な金融投機 根底に

 UNCTADは、金融投機規制のための新たな政策と実質的な生産能力拡大のための投資が必要だとし、そのための政策提言を行っています、また、為替相場の過度な変動化、商品市場の金融化、国際金融システムの再規制についても言及しています。

 報告は先進国では、民間部門の国内需要が弱く、政府が金融市場での信頼性回復を目的に実施している緊縮措置により、経済的な回復は終わりになろうとしていると指摘。これとは対照的に新興国や発展途上国の経済は、国内需要に根ざした強い成長を維持していると指摘しました。しかし、途上国経済も、先進国経済による金融不安定化と投機的な資本の流れの影響を受け、先進国の新たな景気後退の影響を免れることはできないと述べています。

 経済危機からの急速な回復の後、世界全体の国内総生産(GDP)成長率は2010年の3・9%から11年には3・1%への後退が予測されます。新興国と発展途上国では、危機前の成長率を回復、今年は約6・3%に拡大する見込み。一方、先進国での成長率はユーロ圏で1・8%、米国で2・3%にとどまるとみられます。

 米国経済の回復は、賃金と雇用の抑制による国内需要の停滞で失速、金利は当面、歴史的な低水準が続く見込みであることや財政的刺激が弱体であることにより、成長回復の展望はほとんどないと分析。日本経済については、0・4%のマイナス成長を予想。大地震と津波による前例のない部品供給網への影響などによって回復が遅れていると指摘しました。

 また欧州連合(EU)では、賃金収入と国内需要が低い水準にとどまっていると指摘。ユーロ危機が解決できないこと、財政緊縮措置が欧州全域に拡大していることなどでユーロ圏の危機状態は続き、世界経済の成長を抑制する要因となっていると分析しました。


 国連貿易開発会議(UNCTAD) 発展途上国の経済開発促進と、先進国と発展途上国の経済格差是正のために1964年に設立された国連総会の常設機関。目的に、グローバル化(経済の地球規模化)から生じる問題に直面する途上国支援などを挙げています。本部はジュネーブ。加盟国は193カ国。





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