2011年9月5日(月)「しんぶん赤旗」
8日、オバマ氏経済演説
米浮上の特効薬 どこに
【ワシントン=小林俊哉】米経済が深刻な不況に直面するもとで、オバマ米大統領は8日夜、米上下両院合同会議で演説し、新しい経済対策を提案します。1月の一般教書演説を除き、米大統領が議会で演説するのは異例です。
8月31日、米有力シンクタンク・ブルッキングズ研究所が「オバマ氏は何を提案すべきか」と題してシンポジウムを開きました。識者の議論で浮き彫りになったのは、事態の深刻さと決定的な打開策の欠如でした。
投資効果薄れ
“金融危機前に過熱していた住宅市場は沈んだまま。消費者は多額の借金を抱えて財布のひもを締めている。オバマ政権が行った公共投資などによる経済刺激策も効果が薄れてきた”―クリントン政権で大統領経済諮問委員会の委員長を務めたマーティン・ベイリー氏の見立てです。
「われわれが回復を速める方法や手段を知っているのかどうか、定かではない」
米メディアによるとオバマ氏は演説で、社会基盤整備や住宅ローンの救済、失業給付の延長などを提案する見通しです。
しかし、財政出動を伴う対策には、下院で過半数を握る野党・共和党が強く反対します。同党は、オバマ政権が目指すのは「大きな政府」だとして、歳出削減のため、社会保障、教育、環境など生活分野の大幅カットを主張しています。
有権者の失望
オバマ政権も共和党の攻勢で、富裕層増税はつまづき、環境規制は進まず、新たな包括的経済刺激策も打ち出せないままできました。米国の深刻な医療保険事情を描いた映画「シッコ」で知られるマイケル・ムーア監督は、米ABCテレビの討論番組(8月21日)に質問を寄せ、「いかに多くの大統領支持者が深く失望しているか、気づいているか」と強烈に批判。深刻な経済状況のときこそ、国民生活のために力を尽くせとの思いをにじませました。
この問いに、来年の大統領選挙でオバマ氏の選挙参謀を再任するアクセルロッド氏は「短期的には経済への刺激を促し、雇用をつくり、成長を助ける。長期的には投資を保護し、将来的に中間層向けの雇用をつくる」と一般論で応じるのが精いっぱいでした。
状況好転に向けた特効薬がないと指摘される中、1400万人が失業中の米国民に対し、オバマ氏が8日の演説で何を訴えるのか、注目されます。
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