2011年8月23日(火)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 金色に輝く大日如来、火炎を背負って憤怒する明王、阿弥陀如来・薬師如来・種々の菩(ぼ)薩(さつ)は、指先にまで深い慈悲を宿しているかのようです▼東京・上野の国立博物館で開催中の「空海と密教美術展」は、大勢の見学者の嘆声に包まれていました。弘法大師空海(774〜835)は中国から密教をもたらした真言宗の開祖。自筆の書、曼(まん)荼(だ)羅(ら)図や仏像、仏具など99点が公開され、圧巻は、一堂に並み居る教王護国寺(東寺)からの8体の仏像です▼空海は「密教は奥深く、文章で表すことは困難である。かわりに図画をかりて悟らないものに開き示す」(『御請来目録』)と考え、東寺講堂に21体の仏像を配置して立体曼荼羅としました▼その一部である8体の仏像と向き合っていると、山川草木、この宇宙を構成する全てのものに躍動する命があり、互いに共鳴し合っていると説く密教の一端に触れたような気がしてきます▼今、なぜ空海なのか。空海は、「六大無(む)礙(げ)にして常に瑜(ゆ)伽(が)なり」(『即身成仏義』)と、地・水・火・風・空と人の心が障りなく溶け合う、自然と人の調和と共存をうたい上げ、「菩薩の用心は皆、慈悲を以(もっ)て本(もとい)とし、利他を以て先とす」(『秘蔵宝(ほう)鑰(やく)』)と唱えて、人を思いやり、まず人のためを考えて行動しよう、と呼びかけました▼そこに多くの人は、震災後、困難をしのぎ、助け合いながら復興に力を尽くす人々の姿を重ね合わせ、光と地、大気と水の豊かな自然の中に生きる重要性を見て取るのかもしれません。





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