2011年8月14日(日)「しんぶん赤旗」

原発作業員被ばく線量

福島第1は「別枠」

他の原発ではゼロから従事

保安院・東電の暴走


 東京電力・福島第1原子力発電所事故の収束のための緊急作業に従事した作業員の被ばく線量の限度をめぐって、別枠扱いが行われていることが関係者の証言で分かりました。厚生労働省は「別枠」を認めておらず、行政指導に反するとしています。(山本眞直)


 問題の「別枠」は、被ばくした作業員の作業場所を第1原発から他の原発に変更する際の放射線業務従事者登録などの手続きで、「福島第1原発での被ばく線量は別枠扱いになった。(被ばく線量は)記載されない」との対応をとっているというものです。

 これにより福島第1原発での緊急作業で高い線量の被ばくを受けても、他の原発作業では被ばく線量がゼロからのスタートになります。

 別枠扱いを証言した作業員によると、東電柏崎刈羽原発(新潟県)への移動に関連して、内部被ばく検査を受け、放射線業務従事者登録手続きをした際に、担当者から別枠扱いを告げられたといいます。

 東電は、本紙の取材に対し「別枠については厚労省の見解をもとに実施した」(広報部)としています。厚労省の見解に別枠を容認する文言はありません。関係者は「東電と原子力安全・保安院の都合の良い解釈による暴走だ」と批判します。

 原発での通常作業時での被ばく線量の限度は、「年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトを超えてはならない」が基本でした。東電福島第1原発事故を受け、厚生労働省は同原発での緊急作業に限って「250ミリシーベルト」へと引き上げました。

 ところが原子力安全・保安院は4月、同省に対し、線量限度の事実上の再「緩和」となる「別枠」扱いを要求してきました。

 要求の根拠は東電と原子炉メーカーの試算でした。福島第1原発での緊急作業にあたった作業員が他の原発の通常作業についたとき、通常作業での線量限度を適用すると、「従事できなくなる熟練作業員が大量に出現する」「第1原発の収束作業と全国の原発運用に重大な支障を来す」という“高圧的”なものでした。

 厚生労働省は4月28日、「100ミリシーベルトを超えた者については当該5年間の残りの期間に被ばくする作業に就かせないよう」指導することを指示した通達で「別枠扱い」を否定しています。

 同省は本紙の取材に対し、「別枠扱いは認められていない。事実なら行政指導の対象になる」と法令違反にあたるとの認識を示しています。

 原発作業員など関係者からは「『別枠扱い』は、東電などのデータをもとに緩和を厚労省に迫るもので、ここに示された保安院の対応は、作業員の安全よりも原発稼働を優先した『東電保安院』的体質そのものであり、保安院は直ちに解体すべきだ」と批判の声が上がっています。





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