2011年8月13日(土)「しんぶん赤旗」

中国高速鉄道事故

問われる「独立王国」鉄道省


 7月23日に死傷者200人超を出した中国浙江省温州での高速鉄道事故から3週間。「人命軽視」との内外の批判を受け、中国政府は犠牲者への補償や安全対策の強化などを進めています。その一方で中国のメディアが「独立王国」と呼ぶ中国鉄道省の姿が改めて浮き彫りになっています。(北京=小寺松雄)


癒着 発注者と受注者が事実上同じ

隠蔽 「事故の時はいつも同じことを」

 鉄道省の職員は約200万人で中国最大の官庁。その巨大な機構は内部に警察を抱え、検察、裁判所機能も持っています。

 大きな機構と権益を調整するため1970年には交通省と統合。しかし5年後に鉄道省として再独立し、その後は統合には抵抗してきました。そのもとで鉄道省幹部が関連会社の代表を兼ねることが通例となっていました。

 今月初めに公表された財務報告によると、同省の現資産は3兆4000億元(1元=約12円)、今年上半期の収入は3500億元。

 工事発注も巨額に達し、発注者と受注者が事実上同じという体制が、汚職を生みだす重要な要因となったことは明白です。今年2月に劉志軍鉄道相が汚職容疑で解任されたのは象徴的事例です。

方針を変更

 高速鉄道の敷設について鉄道省は、2003年まで国産方式を追求してきました。しかし、同年鉄道相に就任した劉氏は早期開通のため、時間のかかる純国産方式を捨て、資金はかかっても外国技術を導入する方向へ方針を変更。日本、フランス、ドイツなどの協力を得る方式には、国産派からの強い反発があったといわれています(週刊紙「南方週末」7月28日号)。

 同氏の汚職・解任はこうした流れの中で起こりました。

内部告発が

 鉄道省の隠蔽(いんぺい)体質も以前から指摘されてきました。

 今回の事故でも、乗客全員の救助活動が終わる前に、追突した先頭車両をショベルカーで破壊し、穴に埋めました(鉄道省側は「救助作業をやりやすくしただけで、埋めてはいない」と主張)。

 事故後、ある主要駅責任者は「事故があるとすぐ現場をきれいにする。鉄道省はいつもそうだった」「まず責任逃れを考える」と内部告発に踏み切りました(経済観察報8月1日付)。

 事故後、温家宝首相は現場に出向いて内外記者団の質問に答えましたが、直接に責任を負う盛光祖鉄道相の記者会見はいまだに行われていません。

 温首相の記者会見のキーワードは「透明・公開」。事故原因調査と再発防止には、何よりもこの原則の貫徹が求められています。それは同時に鉄道省の体質を一新する道でもあります。





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