2011年8月9日(火)「しんぶん赤旗」

主張

ネットの安全確保

軍事化抑え国際協力の拡大を


 今年の『防衛白書』は初めて「国際社会の課題」の冒頭で、情報通信ネットワーク(サイバー空間)での安全保障を強調し、自衛隊による対応強化と米軍との協力拡大を打ち出しました。サイバー空間の軍事化を進める米軍に“右にならえ”式の防衛省・自衛隊の姿勢は見過ごせません。

 宇宙空間と同様、サイバー空間の軍事化は戦争への予期せぬ危険を拡大します。その活動は人目にふれにくく、軍事と非軍事の区別もあいまいなことから、国民による監視を強める必要があります。

サイバー空間の支配へ

 情報通信の役割は軍事面でもますます大きくなっており、サイバー空間で優位に立つことが実世界での戦争で優位に立つ不可欠の条件となっています。圧倒的な軍事力を誇る米軍は、この面でも支配的な地位を占めようとして着々と手を打っています。

 米国防総省は、サイバー空間を陸・海・空・宇宙と同じく「戦争の一領域」(リン国防副長官)と公式に認めており、不正プログラムなどによる米国のネットワークに対する攻撃を“戦争行為”とみなすとしています。

 米軍は2009年にサイバー司令部を創設し、「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」(10年)で問題の重要性を位置づけたうえ、「サイバー戦略」(11年)を打ち出しました。

 ネットワークに重大な支障をきたすサイバー攻撃で、米国はとりわけ他国の国家機関やテロリストからの攻撃を重視しています。米大統領府が5月に発表した「国際戦略」は、サイバー空間での敵対行為に対して、軍事を含む「あらゆる手段を行使する権利を持つ」と強調しています。戦争の危険をいとわない主張が、米国の公式の立場であることを軽視すべきではありません。

 一部の米メディアは、国防総省が「サイバー戦略」で“実際の銃弾や爆弾”を使った反撃の方針を公言すると報じました。7月に発表された「戦略」には、そうした“好戦的”な内容は盛り込まれませんでした。米軍がサイバー空間を支配しようとしている、との国際的受け止めを回避するためとみられており、戦争の危険を打ち消したものではありません。

 サイバー戦略では「攻勢的な防御」の必要が強調されています。攻撃との境界はあいまいで、こうした活動に必要な技術も持つ米軍自身が、特定対象に攻撃を仕掛ける可能性も否定できません。

 米軍はエネルギー、金融、運輸、通信などの重要なインフラにも強い関心を寄せており、これらのネットワーク上を流れる情報に、軍による監視が強まる可能性もあります。

戦争の引き金にしない

 瞬時に国境を越えるネットは、世界的にますます広く活用され、“国際公共財”としての役割を高めています。ネットの安全確保は、現代社会にとってきわめて重大な課題です。そのためには、緊密な国際協力と法にのっとった解決が欠かせません。

 ネットが戦争の引き金になる事態はなんとしても避けなければなりません。『防衛白書』が打ち出した日米同盟を軸にしたネットの軍事化は、国際協力を広げるうえで障害を作り出し、サイバー犯罪への解決を妨げるものです。





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