2011年8月2日(火)「しんぶん赤旗」

主張

コメの先物取引

主食を投機の対象にするな


 主食の取引を投機市場にゆだねるコメ先物取引の試験上場が、8日からはじまります。東京穀物商品取引所と関西商品取引所が申請していた試験上場(2年間)を農水省が認めたからです。

マネーゲームにゆだねる

 コメの需給と価格の安定は、生産農家にとっても、消費者や小売業者にとっても、重要な関心事です。食生活の安定にとっても大切な課題です。先物取引は、財界などがかねて求めていたものです。コメ市場に投機資金をよびこみ、価格の変動を利用した利益追求の場にしようとするもので、コメの需給と価格の安定を阻害する危険があります。

 先物取引は、例えば6カ月先の価格を予測して売り(または買い)を行い、6カ月後の決済期限までに有利な価格をにらんで買い戻し(または売り渡し)、精算するものです。決済は現物の受け渡しか売買の差額を精算する方法のどちらかが選べますが、圧倒的に売買差額で精算されています。わずかな証拠金で数十倍の取引が可能になるため、投資家によるマネーゲームの場となります。

 コメの先物取引も、生産者や集・出荷業者だけでなく、価格変動によって利ざやを稼ごうとする機関投資家(銀行など)やファンド(基金)、個人投資家の参加を得てはじめて成り立つことになります。先物取引は、投資家の自由な取引の場であり価格が安定してはうまみがないことになります。

 価格の乱高下が起きれば、コメの需給安定や農家の経営安定に大きな影響を与えざるをえません。それは、食料自給率を低下させ、食料の安全保障をも脅かすことになりかねません。近年、世界的な食料・穀物価格高騰の背景に投機資金の流入があることから、国際的にも投機資金に規制の声が高まっています。

 日本の米価は1994年の食糧管理制度の廃止や小泉純一郎自公政権のもとでのコメ流通の全面自由化で下がり続けてきました。昨年はわずかに過剰になったことで米価が大暴落し、60キロあたりの生産者の受け取り価格は1万円以下と、生産費の6割程度に落ち込みました。農家が「コメ作ってめし食えねえ」と対策を求めたのは記憶に新しいところです。

 ところが東日本大震災で不足の懸念が広がると、業者間の取引価格が震災前にくらべ30%も暴騰し、中小の卸業者や町のお米屋さんにコメが入らない状況すら起きています。このように不安定な米価が、先物取引によっていっそう乱高下することが予想されます。

 全国農業協同組合中央会(JA全中)や農民運動全国連合会(農民連)などは、「市場原理主義を徹底しさらなる米価下落のおそれがある」「投機家のもうけのために作っているのではない」などの声をあげ、JAグループは取引に参加しないことを決議しています。

需給と価格安定に責任を

 7月29日開かれたJA主催の「東日本大震災対策・基本農政確立対策全国代表者集会」でも反対が決議されました。断固反対を表明した日本共産党の志位和夫委員長はもとより、各党代表も懸念を表明しました。

 政府・農水省は先物取引の認可を撤回するとともに、コメの需給と価格の安定に責任をもつ方向に、コメ政策を転換すべきです。





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