2011年7月29日(金)「しんぶん赤旗」

米・債務上限引き上げ“攻防”の裏

大統領選視野に“対立”

世論は「双方妥協を」


 米国の債務上限引き上げをめぐる民主、共和両党の対立の背景には、2012年11月の大統領・議会選挙を見据えた思惑があり、債務不履行(デフォルト)の瀬戸際で解決を長引かせる結果となっています。上限引き上げ期限は8月2日です。(西村央)


 民主党は12年末までの財政の不足分をまかなうため、債務上限を現在の14兆2940億ドルから2兆7000億ドル引き上げるとしています。共和党は今回約1兆ドルの引き上げにとどめ、6カ月後に再度検討するという2段階案を主張しています。

 さらに民主党が富裕層増税と歳出減をセットにし、10年間で3兆ドル規模の赤字削減を行うとしていることに、共和党は反発しています。

 「妥協しなければならないのははっきりしているが、協議はまだ続いている」―上院予算委員会のコンラッド委員長(民主党)は27日、溝がまだ埋まっていないことをロイター通信に語っています。

 オバマ大統領は共和党案について、「6カ月しかもたない短期の上限引き上げでは、市場で最高の評価を得ている米国債の格下げを避けるには十分ではない」と25日の演説で言明しています。

 共和党側が頑強に2段階案を崩さないのは、12年の大統領・議会選挙をにらんでのこと。同年初めに再度、債務上限引き上げと歳出減をセットで協議する場をつくることで、「巨額の財政赤字」を生み出したと民主党を批判しながら勝利した10年の中間選挙の再現を狙っています。

 共和党は定数435の下院で現在240議席を占めていますが、その約4割が保守強硬派である「茶会」(ティーパーティー)系議員。これらのグループが民主党案に強硬に反対していると伝えられています。

 一方、世論には変化が出ています。米紙ワシントン・ポストの最新の世論調査によると、68%が債務上限引き上げ問題で双方に妥協するよう要求。これは4月に比べて13ポイント増加しています。


 8月2日の期限 米国では8月2日に債務が法定限度に達します。引き上げがない場合、3日から15日にかけて予定されている年金支払いのための支出や国債の利払いは不能となります。利払い不能は債務不履行とされ、米国債の評価が下がり、米国の長期金利の上昇につながります。





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