2011年7月24日(日)「しんぶん赤旗」

主張

司法修習給費制

「市民の法律家」養成の道を


 これで本当に「市民のための法律家」を養成できるのでしょうか。司法修習生の給与を廃止し、貸与制にする動きが急です。

 当初、給費制廃止の期限は昨年11月とされていました。しかし、法曹養成制度をゆがめるあまりに大きな害悪が明らかになるなか、若い法律家や幅広い市民の反対運動が広がり、昨年の国会では給費制を1年間に限り維持する法律が成立しました。今年11月に、再度の給費制廃止の期限を迎えます。

貧富の差で門戸閉じる

 司法試験合格者は、裁判官や検察官、弁護士として働き始める前に1年間の実務研修を受けます。これが「司法修習」で、最高裁の監督の下、兼業は禁止されアルバイトはできません。これまでは給与が支給されてきました。2004年に日本共産党だけが反対するなか裁判所法が改悪され、司法修習生の給費制を廃止し、生活費を貸与する制度に変えることが決められました。政府は今年中にその実施を強行しようとしています。

 昨年いったん給費制廃止を見送った後、政府は「法曹の養成に関するフォーラム」で検討をしてきました。13日の第3回会合で「貸与制移行を前提として議論を行う」というとりまとめがされました。「給費制廃止ありき」の結論が押し付けられた根拠は、同フォーラムが行ったアンケート調査で、貸与金の返済がはじまる修習後6〜15年目の平均所得が1036万円だという結果です。十分な「高所得」であり、「受益者負担」の立場で、貸与される約300万円を返済させるべきだというのです。

 このデータの読み方はあまりに乱暴です。いま弁護士事務所の経営難が広がり、低所得の弁護士が増えています。同アンケート結果でも、年所得400万円未満という層が12・2%を占めています。

 現在の法曹養成制度では、通常の4年制大学を卒業した後、原則3年間法科大学院で学び、その後に司法試験を受けます。世界一学費が高い日本で、この間の経済的負担は大変なものです。日本弁護士連合会の調査では、奨学金などの借金の平均は300万円を超え、1000万円以上の例もありました。その上、難関の司法試験を突破しても新たな借金を背負わされるのでは、よほど資力のある人でなければ法曹を目指すことができなくなります。

 国民と司法をむすぶ法律家は「社会生活上の医師」として大切な使命を負っています。貧富の差にかかわりなく幅広い階層から法曹を養成すべきなのに、金持ちでなければ法曹への道が閉ざされるというのでは、司法に大きな偏りを生むのではないか。多額の借金を背負うことから、企業法務など「金になる」仕事には熱心でも、労働、環境、平和、人権など「金にならない」仕事を避ける弁護士ばかりになるようでは、国民が大きな被害を受けます。

市民の権利の守り手を

 東日本大震災の被災地では多くの弁護士が無料法律相談に汗を流しています。いざというときに市民のために働く法律家を社会の力で養成することは、明日の「権利の守り手」を育てることです。

 法律家の社会的使命を考えず、志のある者が経済的理由で断念しなければならない制度は間違っています。司法修習給費制は、断固として守らなければなりません。





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