2011年7月19日(火)「しんぶん赤旗」

洋上風力 洋々

独 原発代替の具体策


 ドイツでは8日、原発から2022年までに撤退する法律が制定されました。原発の代替となるエネルギーをどうするのかが、政府の関連資料を通じて明らかになりました。(片岡正明)


送電・蓄電の技術開発に投資

 ドイツの2010年の発電量は6210億キロワット時で、原発はその22・5%を占めます。

 法律によると、東京電力福島第1原子力発電所の事故前に稼働していた17基のうち、事故後に稼働を凍結した8基をそのまま廃止。残る9基について15年、17年、19年に各1基、21年に3基、22年に3基を閉鎖します。

 その代替を期待されている風力・太陽光などの再生可能エネルギーの発電量は、10年の暫定値で1017億キロワット時。成長著しいとはいえ、全体の発電量の16%強にすぎません。それをどう発展させるのか。

 経済技術省や環境省の発表文書で一番強調されているのが、洋上風力発電です。洋上は障害物がなく、風の利用効率も高いからです。

「集合型」を建設

 今後、20年間で北海、バルト海に10以上の洋上風力発電ファーム(一定の地域に風車を集中して建てる集合型風力発電所)を建設し、発電能力で2000万〜2500万キロワットを目指します。

 投資額は総額750億ユーロ(約8・4兆円)にのぼるとされていますが、うち初期投資の50億ユーロをドイツ復興金融公庫が融資します。洋上風力発電所はいずれも大型で、船の航路なども考慮し、深さ20メートル以上、沿岸から12カイリ以上離れた洋上に建設されます。

 ドイツの風力発電は現在、地上中心ですが、2002年以前に建てられた陸上風力発電所については、一部建て替えを認めます。新規のものは、地上から回転軸までの高さが100メートル以上のものに限り、建設を認めます。

 短期的には、ガス、石炭の火力発電で不足電力を補います。2020年までに新たに1000万キロワットの発電能力を持つ火力発電所を建設します。一方で、気候温暖化対策のために、火力発電所から排出された二酸化炭素(CO2)を地下に貯蔵し、大気への拡散を防ぐ施設の建設を急ぎます。

輸入も原発以外

 10年まで輸出超過だった電力は、今年、輸入超過になりそうです。その場合でも欧州では買う電力を選べるため、「原発からの電気ではなく、石炭やガス火力発電からの電気を輸入する」(独環境省の一問一答)としています。

 洋上風力発電のある北海やバルト海から、工業地帯の中心があるドイツ南部への送電も大きな課題です。政府は、効率よく送電できる高圧送電網を15年までに850キロ、2020年までに3600キロ敷設する計画です。15年までの850キロだけで11億ユーロかかると見積もられています。

 さらに、断熱効率のよい住宅やオフィスなどへの改築・新築などで20年までに年間の電力使用量を10%削減。蓄電技術の開発に2億ユーロを投じます。





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