2011年7月19日(火)「しんぶん赤旗」

小選挙区制に“嘆き節”

「二大政党」行き詰まりの中で

民・自の議連(準)


 「マスコミも加わったムード主体の選挙により地滑り的勝利が多くなり、資質の劣る候補者、経験の浅い候補者でも容易に当選することが可能」「信念に基づいた思い切った政策を打ち出しづらい。専門性を持った議員が生まれにくく、金太郎アメ議員が増大」―。

 民主党、自民党の議員らがつくる議員連盟の準備会に、嘆き節ともいえるほど小選挙区制の害悪について並べた「メモ」が配布され、注目されています。

 同議連は、衆院小選挙区制度の見直しを目指すもの。民主党の渡部恒三最高顧問、自民党の加藤紘一元幹事長らが中心となっています。

 小選挙区制は導入時は、「政権選択」のため「民意の集約」をはかるものとされていました。ところが「メモ」では、「票目当てで実現困難なことを約束することも多く、選挙後のマニフェストの撤回や修正も相次いでいる」「二大政党化は進み、政権交代は起きやすくなったといえるが、選挙毎(ごと)のスイングが大きすぎ、不安定化。結果として政治主導が後退」したと、政治の退廃や不安定さなど、その弊害を指摘するくだりもあります。

 小選挙区制が民意を著しくゆがめることについても、「大政党が過剰に代表される。一般に得票率と議席率には『三乗比の法則』(得票率の比の3乗が獲得議席数の比になる)があると言われるが、それ以上の乖(かい)離(り)が生じている」と認めています。

選挙制度見直し議論

大政党優位の危険も

 衆院小選挙区制の見直しを目指す議員連盟。14日の準備会合に参加した自民党議員の一人は「衆院解散の条件を整えるために『1票の格差』是正を進めるが、同時に選挙制度そのものの改革をやる。これと並行して政界再編が起こるだろう」と語ります。

 「二大政党」による政治が深刻な行き詰まりを見せる中で、その基礎にある小選挙区制の是非について当事者の間で議論が起こっていることは、小選挙区制度の害悪を示すものです。

 前出の自民党議員は選挙制度改革の方向性として、「小選挙区は間違っていたという認識は党内でも大勢だ」と強調。そのうえで「基本方向は小選挙区制をやめて中選挙区にするということだが、その場合に(投票用紙に1人だけの名前を書く)単記にするか、(2人以上の名前を書く)連記にするかどうか、そこが大きなポイント。2人区なら2人書ける、3人区なら3人書けるという形にするかどうか」と述べます。

 しかし、この「完全連記」制では、大政党が定数全てを独占する可能性が高く、少数政党排除をさらに進める危険があります。

 この問題では、小選挙区制に基づく二大政党体制づくりを推進してきた「21世紀臨調」からも見直し論が出ていることも注目されます。

 谷口将紀東大教授が、衆院の選挙制度を「より多様な民意を反映できる小選挙区併用型比例代表制に改める」と提案していますが、国会における法律制定の衆院再議決の要件を現行の3分の2から過半数へ緩和するのと引き換えを条件としています。谷口氏の提案は、参院の性格を道州(ブロック)代表とすることなどをセットとするなど多くの問題点をはらんでいます(「日経」6月15日付)。

 他方で民主党は、14日に開いた政治改革推進本部の総会で「衆議院選挙制度の検討について」の案を提示。「1票の格差」是正を検討することを念頭に、(1)比例定数80削減を前提に小選挙区の格差を2倍以内とする案と(2)現在の選挙制度(小選挙区比例代表並立制)を変える案とを示し、検討を進めるとしています。

 同本部関係議員の一人は変更案について「比例代表併用制を想定している」と述べますが、同党が基本的には比例定数の削減にあくまで固執する姿勢を変えるものではありません。

 小選挙区制の見直しの動きについて、民主党関係者からは「いま小選挙区制をなくしたら、次の選挙で民主党はなくなってしまう。あと2〜3回は現在の選挙制度を維持しなければ」という声が漏れてきます。

 政府・与党が6月30日に決定した「税と社会保障の一体改革」成案も、消費税増税と一体に「国会議員定数削減」を進めることを明記しており、警戒が必要です。(中祖寅一)





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