2011年7月16日(土)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 今週、アメリカの学校の教師たちが和歌山の広川町を訪れました。防災教育の研修旅行です▼一行の学びの場所が、「稲むらの火の館」でした。1854年の安政南海地震のさい、村の有力者だった浜口梧陵(ごりょう)が暗闇の中で田んぼの稲むらを燃やし、村人の避難を誘導しました。「稲むらの火の館」は、梧陵への感謝の念をこめ、4年前に建てられました▼小泉八雲の小説や戦前の国語教科書で知られていった「稲むらの火」の逸話は、アメリカにも紹介されています。「稲むら」とは、刈り取った稲の束、もしくは稲わらを、積み重ねたものです。安政南海地震は、今の暦で12月末に襲ってきました。梧陵が火をつけた稲むらは、稲わらだったようです▼村人を救う命の火となって燃え上がった稲わら。しかし、いまニュースで伝わってくるのは不安の火種としての稲わらです。福島県の南相馬市、浅川町の農家で飼っていた牛が、放射性セシウムに汚染された稲わらを食べていた―▼浅川町の農家がそうとは知らず牛に与えていた稲わらは、福島第1原発から70キロ離れた白河市産です。稲わらのセシウム汚染は、宮城北部でもみつかりました。汚染牛の肉は、首都圏から近畿、四国まで出回っていました▼もしやと思い放射線量を測ってみたら「驚くような高い値だった」。農家の男性は消費者に謝りますが、もちろん、本当の火種は稲わらでも農家でもありません。「原発さえなければ…」。男性のうめき声が、国中にこだまし、響いてゆきます。





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