2011年7月12日(火)「しんぶん赤旗」

自衛官自殺 いじめ原因

静岡地裁判決 国に8000万円賠償命令


 航空自衛隊浜松基地で10年間にわたって先輩自衛官から暴言・暴行などのいじめを受け、2005年に男性自衛官=当時(29)=が自殺した事件の人権裁判の判決が11日、静岡地裁浜松支部でありました。中野琢郎裁判長は、いじめの違法性は重大であり、自殺相当の因果関係があるとして原告側の主張をほぼ全面的に認め、国に対し総額8千万円余りの賠償を命じました。

 原告・遺族側は、被害者に対し、殴る蹴るといった暴力と、人格を否定する「死ね、辞めろ」といった暴言や、不要の反省文100枚を書くよう強要し、同僚の前で朗読させるなどして自殺に追い込んだとして、国と先輩自衛官を相手取って損害賠償を求めて提訴していました。これに対し被告側は、「行き過ぎだが指導の一環」などと反論していました。

 勝訴を受け、自身も航空自衛官だった被害者の父親は、「指導などと称するいじめをなくしていただきたい。自衛隊内の自殺はいまだに多く、組織として原因を究明していってほしいと思う」と述べました。

 弁護団は、今回の判決は自衛隊のいじめを正面から認めたもので、係争中の他の裁判の勝利に貢献するもので、自衛隊内に人権を確保するために全力を尽くすとしています。

解説

自殺率、一般公務員の倍

 判決は、自衛隊内の「いじめ」を断罪しました。裁判で被告、国側は、平手やドライバーの取っ手で頭をたたく、尻を足で蹴り上げる暴力、「バカ」「死ね」「辞めろ」「五体満足でいられると思うな」などの言動の動機をあくまで“指導”であると主張してきました。判決はそれを否定し、その不当、違法性を認め、自殺との因果関係を明確に認めました。

 そのうえで先輩自衛官の違法行為から生じた自殺について国は「責任を免れることはできない」と断じました。

 自衛隊の死亡事故を含む不祥事は後を絶ちません。自殺者は2001年から10年まで陸海空を合わせて873人になります。一般の公務員の2倍の発生率です。「まさに異常な事態」(弁護団)です。

 各地で起こされている自衛官のいじめ自殺をめぐる人権裁判は、「自殺した子どもの無念を晴らしたい」という遺族の思いとあわせて、「年間100人にもなる自衛官の自殺をなくしたい」(自殺に追いやられた自衛官の母親)という願いがあります。

 「日米同盟の深化」の名で海外派兵の拡大をはかる自衛隊。「精強な実力組織作り」のもとでいじめなどの違法行為が「指導」の名で黙認されている実態をあらためて示したといえます。(山本眞直)





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