2011年7月5日(火)「しんぶん赤旗」

民法など改正

虐待から子ども守る

人員体制の強化必要


 親による児童虐待から子どもを守るため親権の最長2年間停止を盛り込んだ民法や児童福祉法の改正が、今国会で行われました。

 児童虐待は、児童相談所(児相)への相談が2009年度は4万4211件にのぼるなど深刻な社会問題となっています。

 今回の法改正は、施設に保護された子どもの安全や権利を守ることが目的となっています。児相長や施設長が保護している子どもを病院に受診させようとしても親が同意しない場合など、緊急の場合、親権者の意向にかかわらず必要な措置がとれることを盛り込みました。

 さらに、「子の利益を害する場合」に親権を一時停止できるようにしました。これまで期限の定めのない「親権喪失制度」がありましたが、親子関係の断絶につながりかねないため活用をためらうケースが多く、見直しを求める声が上がっていました。

 日本共産党の井上哲士参院議員は5月17、24日の法務委員会で「改正で子の利益の尊重がより明確化されたことは重要だ」と述べるとともに、「人員体制の強化なしには実効性がない」と指摘しました。

 10年前の4倍になるほど虐待対応件数が急増しているにもかかわらず、児童福祉司は約2倍の2428人で、まったく追いついていない状況です。親権制限や強制入所を判断する家庭裁判所の体制もぜい弱です。

 井上氏は、児相と家庭裁判所の体制整備が不可欠だと強調。江田五月法相も、「(人員体制の問題が)根本にある」と認めました。付帯決議には、「児童相談所・家庭裁判所の体制整備」が盛り込まれました。

 井上氏は、法改正で親権停止期間を定めたことで父母が目標をもって更生する意欲につながると述べたうえで、「目標は子どもが安心して家族に戻れるようにすることだ」と指摘。家族再統合の取り組みは、厚生労働省の補助事業もほとんど活用されていないなど、進んでいない状況を示し、親への援助を強化するよう求めました。

 また、児相と親との間で深刻な対立関係を生まないよう、親子分離の際は事後的でも司法関与が必要だと主張。小宮山洋子厚労副大臣は「検討課題だ」と答弁しました。

 今回、懲戒権の問題も議論になりました。

 改正により親権が「子どもの利益のため」に行使されるものと盛り込まれたことは前進です。一方で、親権のうち懲戒権については、親権制度見直しを検討した法制審議会が、「懲戒権」という文言自体を削除すべきとの意見が多数であったにもかかわらず、「しつけもできないという誤解が広がる」などとして残されました。

 宮本岳志衆院議員は4月20日の法務、青少年特別委員会連合審査で、世界的には体罰は認められていないことを示し、体罰正当化のよりどころになる懲戒権の削除を主張。江田五月法相は「反論ございません」と答えました。(前野哲朗)





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