2011年7月1日(金)「しんぶん赤旗」

難病患者の実態を新制度に

年収200万円未満 半数

JPA全国調査 就労者は5人に1人


 日本難病・疾病団体協議会(JPA・伊藤たてお代表)はこのほど、「難病患者等の日常生活と福祉ニーズに関するアンケート調査」の結果を発表しました。調査から難病や長期慢性疾患の患者の苦しい生活と必要な福祉サービスを受けられない実態が浮き彫りになりました。 (岩井亜紀)


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(写真)記者会見でアンケート調査について報告するJPAの伊藤たてお代表(右)=厚生労働省内

 1972年に難病対策が始まって以来、初めての全国調査です。JPAと北海道難病連、難病支援ネット北海道が全国の33の難病団体を対象に行いました。47都道府県1380人(回収率46%)、71疾患の患者から回答がありました。

 調査では、本人年間収入が0円から200万円未満が50・9%。主な収入源は「年金」が61・2%ともっとも多く、「給料・賃金」は27・9%でした。

 最近6カ月の就労状況で「主に就労している」人は、5人に1人(19・7%)とわずかでした。

 現在、就労していない人で就職を希望する人に、就職活動をする上での課題をたずねると、「体力的に不安がある」が50・1%にのぼり、「勤務時間等の労働条件が合う求人が少ない」が16・6%でした。

 伊藤代表は「就労問題でかぎとなるのは、職場や社会の病気への配慮だ」と指摘します。

 症状の変化が「毎日ある」と回答した人は全体の41・2%、「日によって変化が大きい」は27・8%で、「ほとんど変化しない」はわずか7・8%でした。

 障害者自立支援法下で福祉サービスを利用するには、症状が固定し医師が「治癒不能」と診断することが条件です。多くの難病患者は症状が固定していないため、いまの障害者制度では対象外となってしまいます。

 「障害者手帳を持っている」という人は65・4%でした。障害者手帳の等級は、最重度の「1級」(48・4%)がもっとも多く、調査から、認定されるときには障害の程度が重くなっているという実態が浮き彫りとなりました。

 伊藤代表は「自立支援法は、障害の重度化を防ぐために利用できる仕組みになっていない」と訴えます。

 今回調査で今後利用したい、あるいは利用を増やしたい福祉サービスを聞いたところ、「居宅介護」(28・6%)、「就労支援」(22・2%)、「機能訓練・生活訓練」(17・7%)に多くの要望が集まりました。

 難病や長期慢性疾患の人たちが、障害が重度化する前に、家庭生活と就労を支える福祉サービスを利用できるようにすることが、自立した社会生活を保障するうえで重要な課題となっています。

 障害者自立支援法廃止後の新制度に難病患者も対象とするよう国は議論をしています。

 伊藤代表は「今回の調査で明らかになった難病患者の実態や要求を新制度に反映させなければなりません。制度のあり方を変えないと患者の社会的不利は改善されない」と強調しています。

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