2011年6月30日(木)「しんぶん赤旗」

主張

菅首相の「政局」

被災者無視の政争許されない


 菅直人首相が「辞意」を表明しているのをうけ、辞任の時期や条件をめぐる“政争”が激しくなっています。自民党ばかりか民主党内からさえ菅首相の早期辞任を求める動きが強まる一方、菅首相は延命をねらって「辞任」の条件を引き上げ、「衆院解散」の狙いさえ取りざたされるありさまです。

 こうしたなか会期を延長した国会では、まともな審議がおこなわれない事態が続いています。東日本大震災の被災者への支援や東京電力福島第1原発事故への対策は文字通り待ったなしです。被災者を無視した政争は許されません。

「延命」のため混乱招く

 菅首相は今月初め、自民党などが提出した不信任案に民主党内からも同調者が出て可決されるのを防ぐために、震災対策に「一定のめど」がつけば「若い世代に引き継ぐ」と表明しました。自民党などの不信任案は先の見通しも示せない党略的なものでしたが、「辞任」を示唆しただけで延命をはかった菅首相の態度も無責任です。

 東日本大震災の被災者支援や東電原発事故のためにやるべきことは山積しています。被災地のがれきの処理や、農地・漁港の復旧、原発災害の被災者に対する賠償も遅れています。にもかかわらず菅首相は、「辞任」を自らの延命のために利用し、その条件を今年度予算の公債発行のための特例法案や2次補正予算案の成立、さらには再生エネルギー促進法案の成立などと次々引き上げてきました。通常国会の会期は8月末までの70日間延長されたのに、党略的な政争のためにまともな審議がおこなわれていないことひとつを見ても、菅首相・民主党と、自民・公明両党などの責任は重大です。

 菅首相は、自民党などの協力で成立させた復興基本法にもとづく復興担当相に松本龍防災担当相を兼務(環境相は交代)させるとともに、原発担当相に細野豪志氏を任命しました。新しい担当相が事態にどう対処しようとしているのかこそが徹底してただされるべきですが、実行されていません。

 しかも菅首相は自民党参院議員だった浜田和幸氏を総務政務官に就任させ、自民党などの反発を招いています。浜田氏の“一本釣り”自体は、自民党と民主党の基本政策に違いがないことを示すだけですが、まさに手段を選ばぬものです。菅首相は28日の民主党両院議員総会では「エネルギー政策が次の国政選挙の争点になる」と、解散・総選挙を示唆したとも取れる発言もしています。自らの「延命」のためにはなりふりかまわぬ態度であり、現在の状況は菅首相が作り出した「政局」だといわれるのも当然です。

被災者の立場での論戦を

 民主、自民、公明などが成立させた復興基本法や、政府の復興構想会議が示した提言は、被災者の生活と生業(なりわい)の再建を最優先するのではなく、上からの「復興」計画を強行し、増税まで押し付ける、被災者の願いに反した中身です。一連の政争が菅首相の「辞任」の時期を争うだけで、喫緊の被災者支援や原発事故対策のために何をやるべきか、その中身を深めるものになっていないのはいよいよ重大です。

 こうした方向を改めさせ被災者が求める対策を政府に実行させていくうえで、国会での被災者の立場に立った論戦と国民のたたかいがいっそう重要になっています。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp