2011年6月26日(日)「しんぶん赤旗」

空疎な“美文”と復興


 この“小説”を被災者はどんな思いで目を通すのか―。

 25日、首相に提出された復興構想会議の「提言」はそう思わざるを得ないほど飾った文章が散在します。

 前文冒頭から「破壊は前ぶれもなくやってきた」「かくてこの国の『戦後』をずっと支えていた“何か”が、音をたてて崩れ落ちた」。原発事故についても、「パンドラの箱があいた時に、人類の上にありとあらゆる不幸が訪れたのと類似の事態」「しかし、パンドラの箱には、たったひとつ誤ってしまわれていたものがあった。それは何か。『希望』であった」という調子です。

 工夫を凝らした“美文”をもって、故郷を離れ、放射線による健康被害に日々おびえて暮らす被災者・国民に「希望」を説く―。しかし、その“美文”を一皮はげば、復興財源の確保を口実に、これら被災者にもかぶさってくる消費税増税さえ可能にする危険な中身があらわれます。

 記者は震災10日後に被災地入りしました。がれきの山にたたずみながら「ここに隣のおばあちゃんが埋まっているはず」とつぶやいた夫妻、「この年で一からやり直すなんて」と絶句した年配女性…。あの日から3カ月半。生活再建の遅れから被災者の復興への意欲が絶望に変わりかねない状況で、みな固唾をのんで政治の行方を見つめています。

 復興に必要なのは、空疎な“美文”ではなく、被災者要求にただちに応える現実の施策と政治です。 (吾)





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