2011年6月24日(金)「しんぶん赤旗」

米専門家も安全性に懸念

配備狙うオスプレイ

エンジン停止に対応できず


 沖縄の米海兵隊普天間基地(宜野湾市)に2012年10月からの配備が狙われている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ。日米両政府は、普天間基地に現在配備されているCH46輸送ヘリコプターよりも「安全」だと宣伝しています。しかし米国では専門家からも安全性に対する懸念が強く指摘されていました。

“人命を軽視”

 2009年6月23日、米下院監視・政府改革委員会でオスプレイに関する公聴会が開かれ、航空専門家のリボロ氏が証言に立ちました。同氏は1992年6月から2009年3月まで国防分析研究所(IDA)でオスプレイの主席分析官を務めていました。IDAは米国防総省運用試験評価局を支援し、リボロ氏はオスプレイの飛行テストや技術データの分析・評価をしていました。

 リボロ氏は証言のなかで、オスプレイが抱える「重大問題」の一つとして「オートローテーション能力の欠如」を指摘しました。

 「オートローテーション」とは、すべてのヘリコプターに備わっている能力で、エンジンが何かの理由で停止した場合、墜落を避けるため、主回転翼を風の力で空転させて揚力を生み出し、着陸する方法です。飛行機が行う滑空(グライディング)のヘリコプター版とされます。

 リボロ氏は「V22は安全にオートローテーションができず、このことは製造者や海兵隊も認めてきた」と指摘。「V22がもし民間輸送機であれば、米連邦航空局(FAA)の規則が定める基礎的な耐空性基準(航空機の安全性を確保するための基準)を満たすことができない」と強調しました。

 同時に、FAAの耐空性基準は軍用機には適用されないけれども、過去にはこれに相当する基準が乗員輸送の軍用機には課されていたと指摘。こうした国防総省の政策から初めて逸脱したのがオスプレイだったと述べ、「兵士の命の軽視」だと強く非難しました。

情報の開示を

 オスプレイを製造しているボーイング社などのホームページに掲載されている同機の「2010年版ガイドブック」は、「V22はオートローテーションができないため安全ではない」という議論を「作り話」だと強調。エンジンが2基付いていることなどから「出力が切れた状態での着陸はほとんどあり得ない」とし、「もし必要であれば航空機モードで滑空できる」と強調しています。

 しかし、リボロ氏は証言で「V22はヘリ・モードから航空機モードに切り替えるのに12秒かかる」と指摘。その間に機体は約1600フィート(約480メートル)落下するため、1600フィート以下の高度をヘリ・モードで飛行中、出力が失われることになれば「壊滅的な損害を受けることになる」と指摘していました。

 リボロ氏は、議員から「(オスプレイが)航空史上どの航空機よりも安全な記録を持っていたとしても危険な航空機なのか」と問われ、「そう思っている」と答えています。

 オスプレイにはこのほか、下方への吹き降ろしが他のヘリコプターに比べて激しいなど、深刻な住民被害につながる問題が指摘されています。日本政府は米政府の説明をうのみにせず、徹底した安全性の検証と国民への情報開示を行うべきです。 (榎本好孝)


 MV22オスプレイ 両翼のローター(回転翼)の向きを変えることで、ヘリコプターのような垂直離着陸や、固定翼のプロペラ機のような水平飛行ができる輸送機。試作段階から現在までに5件の墜落事故(うち1件は空軍の特殊作戦型CV22)を起こし、計34人の乗員が死亡しています。





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