2011年6月17日(金)「しんぶん赤旗」

衆院を通過した障害者基本法改正案

地域での共生を限定

民・自・公 3党合意を国会に押しつけ


 16日に衆院本会議で全会一致で可決され参院に送られた障害者基本法改正案は、障害者施策の理念や障害の定義などの基本を定めるものです。今回の改正は、国連の障害者権利条約批准(2006年に採択)に向けた国内法整備の“第一歩”と位置付けられてきました。

定義見直し

 現行法が「障害者の福祉の増進」を目的としているのに対し、改正法案は障害者の基本的人権を明記。その理念にもとづいて「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会」の実現を掲げました。

 「障害」のとらえかたについては、現行の心身の状態のみのとらえかたでなく、障害者の社会参加を阻む社会状況(社会的障壁)によって障害がうみ出される、と定義を見直しました。

 「障害を理由とした差別の禁止」を定めただけの現行法に対し、差別の禁止の観点から、社会的障壁の除去にあたって「必要かつ合理的な配慮がなされなければならない」との規定を新設しています。

 障害者権利条約では、障害のない人と同様の権利を保障し基本的自由を行使するための「合理的配慮」を行わないのは差別に当たる、と明確に規定されています。

 この間の障害者の運動で、改正法案は、現行の基本法を一定程度は前進させるものとなっています。

 しかし、障害当事者が参加して抜本改正を議論してきた「障がい者制度改革推進会議」の議論が十分に反映されず、障害者権利条約の趣旨を徹底させるという点できわめて不十分です。

 障害者が、障害者でない人と「等しく基本的人権を享有する」としながら、「どこで誰と生活するか」や意思疎通の手段などの自由な選択の保障に、「可能な限り」という限定がつけられたのが最大の問題です。医療・介護を身近で受けることなどについても同様の限定がついています。

修正を提案

 日本共産党は、▽「可能な限り」の削除▽「合理的配慮」の定義を明記し、それをしないことは差別だと明確にする▽「障害者」の中に難病患者など支援を必要とするすべての人たちがふくまれることを明確にする―ための修正を提案しました。

 しかし、民主、自民、公明の3党は、3党だけで修正協議を行い、国会の審議は衆参両院とも委員会で審議入りした日に採決するというスピード審議で押し通そうとしています。

 内閣府の園田康博政務官(民主党)は「推進会議」の場で改正案の修正を求める意見に対し、「国会での審議で、より良いものにしていきたい」と述べていました。

 にもかかわらず、「私たち抜きに私たちのことを決めないで」と求めてきた障害当事者の意見を聞くための参考人質疑も開きませんでした。十分な審議がつくされたとは到底いえません。

 民・自・公の3党協議を優先させて国会審議をないがしろにし、障害者の意見を十分に反映させないやり方は許されません。 (鎌塚由美)





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