2011年6月2日(木)「しんぶん赤旗」

主張

原発事故被害

一日も早い全面賠償の実現を


 東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の爆発・放射能漏れ事故で避難を余儀なくされ、出荷や作付けの停止、売り上げの減少などに苦しむ住民の生活が耐え難いものになっています。

 被害の賠償について検討してきた政府の原子力損害賠償紛争審査会がようやく「2次指針」をまとめ、賠償の責任を負う東京電力も、避難した住民に加え、農漁民や中小業者への仮払いを開始しますが、あまりに遅すぎます。政府の責任で一日も早く、あらゆる被害への賠償を実現させるべきです。

毎日の生活にも事欠く

 東電福島原発の事故では、原発から20キロ圏の「警戒区域」の住民が避難させられているのに加え、周辺の飯舘村など飛散した放射性物質の濃度が高い「計画的避難区域」の住民の避難も続いています。地震や津波で痛めつけられたうえ、文字通り着の身着のまま避難させられた住民は、避難所や知り合いなどに身を寄せ、毎日の生活にも事欠くありさまです。

 原発からの放射性物質の拡散が続いているため、避難した住民が自宅に帰れるめどさえ立ちません。農産物や水産物の出荷や作付けの規制、工場や商店などの営業中止、売り上げや観光客の減少などが続いており、住民は大地震と津波、原発事故と「風評被害」の“四重苦”に苦しめられています。

 原発被害の賠償責任は、事故を起こした東京電力が負っています。賠償の範囲を審査する政府の審査会は、「1次指針」で避難させられた住民や出荷を規制された農産物について賠償を認めたのに続き、「2次指針」では福島、茨城など4県の農産物の風評被害や、精神的被害への賠償も認めました。

 しかし、風評被害の賠償が認められたのは4月までに出荷規制などの指示が出た地域の食品の被害だけで、木材や花など食品以外の農産物の被害や、5月以降規制された茶葉などは対象外です。風評被害は賠償が認められた県以外でも広がっています。観光への被害も甚大ですが「2次指針」で認められたのは福島県内の業者だけで、隣接する栃木県の日光などは含まれていません。避難にともなう精神的被害についても、具体的に賠償額をどう算定するかについての結論は先送りになりました。

 これらの被害が賠償の対象となるかどうかはこれから検討されますが、農水産業や観光などの被害にせよ、避難にともなう精神的被害にせよ、東電福島原発の事故がなければ受けなくてよかった被害です。政府は勝手な「線引き」で対象を狭めるのではなく、原発事故にともなうあらゆる被害について全面的な賠償を認め、東電に実行させるべきです。日本共産党の高橋ちづ子衆院議員の追及に枝野幸男官房長官が認めた、「避難区域」以外の自主的な避難者への賠償についても、具体化すべきです。

東電は賠償責任果たせ

 東電がようやく開始した賠償の仮払いはまだまだ不十分です。避難生活がいつまで続くのかのめども立たないなかで、1回だけの仮払いでは生活にも行き詰まるのは目に見えています。東電があらゆる努力をつくすとともに、電力業界や金融機関などの協力も求めて賠償の責任を果たすべきです。

 被災者が安心して生活の立て直しに踏み出すためにも、一日も早い全面賠償の実現が不可欠です。





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