2011年5月24日(火)「しんぶん赤旗」

沖縄・米海兵隊のグアム移転

「8000人」は水増し 経費も

震災復興急ぐとき 計画は白紙に戻せ


 在沖縄米海兵隊のグアム移転計画で「8000人」とされている移転人数が、実態とかけ離れた水増しされたものであることが、内部告発サイト「ウィキリークス」が公表した米秘密公電で改めて明らかになっています。「8000人」を前提に、日米が合意した移転費用の日本側負担額は60.9億ドル(当時のレートで約6760億円)。これも大きく水増しされた数字ということになります。(榎本好孝)


意図的に大きく見積もられた

 「ウィキリークス」が公表した在日米大使館から米国務省あての秘密公電(2008年12月19日)は、「8000人」という数字は「グアムに移転する部隊の予算上の定数」であり、「(移転する海兵隊員の)実数はほぼ間違いなく、承認されている定数(8000人)より少なくなる」と述べています。

 移転する海兵隊員の家族「9000人」という数字も「(グアムに移転する)部隊が定数いっぱいに充足された場合の家族数の計算に基づいている」と指摘。「(実際に)沖縄にいる家族の総数は9000人よりも少ない」と述べています。

 つまり、「8000人、9000人という数字はともに日本での政治的価値を最大化するため意図的に大きく見積もられた」もので、「実際とは大幅に異なる」(同公電)数字で、沖縄県民や日本国民に計画を受け入れさせるための政治宣伝にすぎないのです。

日本側の負担は3年分を予算化

 重大なのは、水増しされた数字を元に、グアム移転費用の日本側負担分が決められていることです。

 自公政権時代の06年、日米間では、▽海兵隊の司令部庁舎や隊舎、学校などの生活関連施設▽家族住宅▽電力、上下水道などのインフラの整備にかかる経費(60・9億ドル)を日本側が負担することが決まりました。すでに09年度から本格的な予算計上も始まり、11年度までの3年間で総額約1364億円に上っています。

 当時、政府は「例えば家族住宅は、全体で9000人の家族がグアムに移転するということで、普通の家族構成で3500戸程度(が必要)と考えている」(06年4月28日の衆院外務委、大古和雄防衛庁防衛局長=当時)と表明。民間設計会社に家族住宅約3500戸の配置計画まで作成させています。

 現在の民主党政権も「グアムへの移転に伴って必要な施設、インフラの整備は、定員数としての8000名の海兵隊員の移転を前提としつつ、協議を通じて具体化を図りたい」(10年3月19日の参院外交防衛委、楠田大蔵防衛政務官=当時)との立場です。

 家族住宅でいえば、水増しされた約3500戸を建設すれば当然空きが出ることを想定してか、沖縄から移転してくる海兵隊員以外の家族が入居することも否定していません。

施設建設単価はきわめて高額に

 移転費用の問題では、人数の水増し問題のほか、施設建設の単価がきわめて高額だという問題もあります。

 約3500戸が必要とされる家族住宅の整備に日本は25・5億ドル(合意当時のレートで約2831億円)を負担することになっています。1戸当たり約8000万円にもなります。

 米国領の基地建設に日本が経費を負担するということ自体、国際的にも歴史的にも類例がありません。東日本大震災からの復興が急務になっている中、グアム移転経費の負担は白紙に戻すべきです。

グラフ




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