2011年5月18日(水)「しんぶん赤旗」

主張

原発事故「工程表」

東電任せでは不安消せない


 東日本大震災で重大な事故を起こした東京電力福島第1原発について、東電が事故収束の道筋を示した「工程表」を改定し、それをうけ政府も初めて、被災者対策の「工程表」を明らかにしました。

 原発事故で避難を迫られ、大きな被害を受けている被災者に、政府の責任で事態を収束する見通しと、故郷に帰り生活を取り戻す展望を示すのは当然です。政府が初めて「工程表」を公表したのはこれまでの「東電任せ」との批判をかわすためですが、実現の裏付けを欠く東電の「工程表」があくまで前提で、被災者の不安にとうてい応えるものではありません。

事態の変化反映してない

 東京電力の事態収束の道筋は、4月に発表した、3カ月程度の「ステップ1」で原発から放出される放射線量を減少させ、6〜9カ月程度の「ステップ2」で放出を管理し抑制するとの「工程表」をもとにしたものです。その後事態は変わっているのに、見通しだけは変えないというのは、実現性がいよいよ疑われるだけです。

 政府の被災者対策の「工程表」も、東電の「工程表」どおり原発事故の収束が進むことを前提にしており、「東電任せ」「東電頼み」はこれまでと変わりません。

 東電の当初の「工程表」は、「ステップ1」の間に原子炉を水で満たし、安定的に冷却することをめざしていました。ところが1号機では水位計の破損が明らかになり、事故直後に燃料が溶融して圧力容器に穴が開き、外側の格納容器も破損して、注水を続けても予定通り満水にならないことが明白になりました。新しい「工程表」では、原子炉建屋などのたまり水を循環させて冷却させる方法をとるとしましたが、これまでより難しいといわれる方法をとりながら、収束の見通しは変えないというのでは、まったく説得力がありません。

 2、3号機についてはまだ作業員が建屋のなかに入って作業することさえできず、安定的に冷却する作業が進められるのかどうかさえ見極めがつきません。タービン建屋に高濃度の放射性物質を含む水が大量にたまっている2号機だけでなく、3号機でも燃料溶融の可能性が高く、原子炉に注水しても圧力容器の温度が下がらない状態が続いています。

 原発の事故収束の見通しが予定通り進まなければ、「警戒区域」への立ち入りや土壌の除染などの対策も見直しが迫られるのに、東電が示した見通しだけを前提に政府が「工程表」を作成するというのはあまりに無責任です。政府は「工程表」づくりを東電に丸投げし追認するのではなく、原発事故のあらゆるデータを掌握し、裏付けと根拠を示して収束の戦略と展望を明らかにすべきです。

支援や賠償にも責任を

 原発事故の収束にあらゆる力を結集すると同時に、被災者の生活をどう支え、放射性物質で汚染した土壌をどう回復するのかなどの見通しを、政府が責任をもって示すべきです。避難を命令しながら避難先も満足に手配せず、被害の賠償も東電に十分実行させないというのでは、政府が責任を果たしたことになりません。

 原発災害から命と暮らしを守る対策に一刻の猶予も許されません。原発事故が政府の責任というなら、政府はまず被災者への支援と東電による賠償実現に力をつくすべきです。





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