2011年5月18日(水)「しんぶん赤旗」

被災店舗など修繕費 5割補助

岩手県が全国初 制度創設 東日本大震災


 岩手県は、東日本大震災で被害を受けた沿岸部の店舗や工場の修繕費の5割を補助する制度を創設しました。災害で被害を受けた店舗などへの直接補助制度は全国で初めて。今後、市町村に補助の一部の負担を求めるための調整を行った上で実施します。(藤川良太)

県商連・共産党など要望


“建て替えは対象外 国に支援求めたい”

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(写真)津波前には多数の商店があった駅前の通り=17日、岩手県陸前高田市

 同制度は「中小企業被災資産修繕費補助」(修繕費補助)。被災した店舗や工場、機械設備の災害復旧に伴う修繕で、その経費の半分を県と市町村が補助します。補助上限は店舗の修繕などで200万円、工場の場合は2000万円となっています。

 ただし、津波で流失した店舗や工場の建て替えは対象外。機械や設備を買い換えた場合にも補助は出ません。

 県経営支援課の高橋雅彦担当課長は、同補助制度を創設した理由について「雇用維持や復旧のための早急な対応としてつくった」と説明。また、現在、対象外となっている店舗などの建て替えについては「財政負担が多額になり県の枠組みで対応するということになると厳しい面もある。抜本的なところは国に要望していく」と話しました。

 この間、被災した店舗などの復興支援をめぐって、日本共産党岩手県委員会は「マイナスからではなく、せめてゼロからのスタートを」として、県に対しこれまでの制度の枠を超えた支援を求めてきました。岩手県商工団体連合会も、店舗・工場などへの直接支援を上野善晴副知事に要望していました。

「画期的」「助かる」被災者に笑顔

 全国で初めて災害で被害を受けた中小業者の店舗や工場への直接補助を行う岩手県の「中小企業被災資産修繕費補助」制度。現場からは「画期的」との声が上がっています。同時に、市町村の担当者からは津波で多くが流失してしまっている実態を指摘し、修繕だけでなく建て替えなどに対する補助や財政的支援を国に求める意見が聞かれます。

 大船渡市盛町内ノ目で食堂を営む男性(64)は、補助制度に喜びます。「これは助かる。なんとかやろうと思うよね」。

 津波で店は、1メートルほど海水につかりました。冷蔵庫4台はなぎ倒され、店にはがれきが流れ込みました。

 この2カ月で再開を目指し、海水がしみ込んだ畳を捨て、ヘドロかき出し、床をはぎました。しかし、いまも壁には茶色い線が残ります。

 食堂では盛りがよくカツカレーが大人気でした。近くの大学を卒業し、盛岡市に就職した人が震災後、「再開して、また食べさせてほしい」と訪ねてきたほど。男性は「再開して、また、食べてもらいたいね」と語りました。

 「再開には300万ぐらいかかる。少しでも補助があれば本当にがんばれる」。男性は笑顔を見せました。

 一方、市町村の担当者は問題点を指摘します。

 大船渡市商工観光物産課の佐藤浩徳係長は「いいと思うが、店を流失した人は使えない」と話します。同市大船渡町の商店街は、多くの店が流失しました。「建て替えなどに改めて何かしらの支援が必要。無利子融資はあるが二重ローンの問題もある。地方の財政は厳しいなか、国に支援してほしい」と語りました。

 市街地が壊滅的被害を受けた陸前高田市。企業立地雇用対策室の熊谷重昭主査は「県の説明もまだなので、すべてはこれから」としながら、「多くの店舗が流失しているなかで、どれだけの補助の希望があるのか分からない」と話します。その上で「被災自治体はひっちゃかめっちゃかになっている。財政的にもマンパワーも国に支援してほしい」と求めました。





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