2011年5月11日(水)「しんぶん赤旗」
誕生から1年 英連立政権不安定化へ
地方選大敗の自民、独自の動き
保守党と労働党の2大政党政治が続いてきた英国で、第2次世界大戦後初の連立政権が誕生して11日でちょうど1年。5日投票のいっせい地方選挙では最大与党の保守党が議席を維持した一方、保守党と連立を組む第3党自由民主党は大敗しました。同日実施の国民投票でも自民党が強く推した下院選挙制度改革(修正小選挙区制の導入)は大差で否決されました。議席を増やした最大野党労働党は自民党に政権離脱を呼び掛けましたが、自民党は政権内にとどまり、独自の動きを強める意向で、政権の不安定化が進みそうです。 (ロンドン=小玉純一)
自民党のクレッグ党首(副首相)は「財政赤字削減計画への非難の矛先が自民党に向かった」と選挙の敗因について語っています。
この1年、連立政権の焦点は福祉・教育を含む歳出削減でした。「小さな政府」志向の保守党は地方選挙でその地盤が崩れませんでした。一方、大学授業料値上げ反対を総選挙で公約していた自民党は、教育予算減らしのための授業料最大3倍化に手を貸し国民を裏切りました。自民党支持者は、政権の歳出削減策が自民党の保守党への譲歩、屈服によって可能となったと考え、自民党を罰したのでした。
1年前の総選挙はどの党も過半数議席に至らず、第3党の自民党が政権樹立のキャスチングボートを握りました。自民は、政権協議で政策的には近いといわれた労働党とではなく、保守党との連立を選択。その決め手となったのが、少数政党である自民党にとって圧倒的に不利な現行小選挙区制を改革するための国民投票実施で合意したことでした。
同時並行して実施された地方選挙と選挙制度改革国民投票のいずれでも敗北した自民党は存立の危機に直面しています。いま総選挙をやれば自民党議席ゼロの可能性も否定できないといわれます。
自民党には総選挙を招く恐れのある連立離脱の選択肢は無く、政権内にとどまりながら国民の信頼を取り戻す難題に挑むしかないと見られています。
クレッグ党首は8日、英BBC放送の番組で「この国は経済危機にある。われわれは連立にとどまる理由がある」と述べる一方、保守党が課題としている国民保健サービス(NHS)改革などには独自に対応する意向を表明しています。政権内の不協和音が表面化する場面もみられそうです。
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