2011年5月9日(月)「しんぶん赤旗」

憲法審査会始動へ急

民・自 強権国家づくりの思い共有


 改憲原案の発案、調査権限を持つ衆参憲法審査会の始動へ、動きが強まっています。

 民主党は13日にも、参院憲法審査会の規程の議決をしたいと、2日の参院議院運営委員会で主張しました。これを受け、鈴木政二議運委員長(自民党)は同日の会見で、規程が議決されれば速やかに委員の選任に進み、衆院側とも協議して両院の審査会がそろって始動するのが「理想的」であると述べました。

 動きの背景には、民主党政権が混迷の末、自民党政治への逆戻りを強めていることがあります。

「構造改革」推進

 特に菅内閣は、日米同盟の「深化」と消費税増税をはじめとする「構造改革」推進の方向を強め、1月の内閣改造では与謝野馨元財務相(自民党当時)を入閣させ、マニフェストの見直しを宣言するなど、自民党との「大連立」への動きを強めてきました。衆参両院の“ねじれ”のもと、審査会始動へと舵(かじ)を切り、国会運営で自民党などの協力をとりつけたいという思惑もあります。

 4月28日の新憲法制定議員同盟(会長・中曽根康弘元首相)の大会では、首相就任時に退会していた鳩山由紀夫前首相が顧問に復帰しあいさつ。「国難のときに、国家の緊急事態を総理が宣言することができる憲法に」とし、「憲法改正の大きなきっかけの年とする」と述べました。

 自民党の大島理森副総裁は「今年、憲法改正に全力をあげる認識で、改正試案の詰めに全力をあげている」と述べ、「民主党内をまとめてほしい」と注文をつけました。自民党は4月27日に開いた同党憲法改正推進本部役員会で、「非常事態条項」を同党の新憲法草案に盛り込むことで一致しています。

 「震災」を口実に強権的な体制をつくる狙いが、民・自両党で共有されています。

改憲合作の危険

 新憲法制定議員同盟は、2008年に自民・民主両党の幹事長がそろって顧問に就任するなど、改憲の発議に必要な衆参各院の3分の2の賛成を視野に、改憲の目標と運動を自民・民主が共同でおしすすめる体制を築くものでした。「政権交代」前後に崩れた体制を再構築し、「二大政党」による改憲合作の危険が再び強まっていることに警戒が必要です。

 新たな改憲議連の動きも活発になっています。厳格な改憲手続きを定める96条の「要件緩和」を一致点に、自民・民主議員有志で超党派議連をつくる動きも出ています。

 また、民主、自民、公明、みんなの各党などの有志議員でつくる「衆参対等統合一院制国会実現議員連盟」(会長・衛藤征士郎衆院副議長)は4月28日、国会内で総会を開き、憲法審査会規程の議決と委員の選任を速やかに行うよう衆参両院議長に申し入れました。同議連では、「二院制」を定める憲法42条の改憲案をすでにまとめています。

 「一院制」論は、衆院の「多数派」が次の参院選で惨敗を繰り返す衆参“ねじれ”の恒常化で、国会審議の停滞にいら立つ財界などが強く主張。自民党政治の衰えで、「二大政党」政治がうまく機能しない状態を、強権的に突破しようという危険な動きです。(中祖寅一)





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