2011年5月9日(月)「しんぶん赤旗」

日米外交当局 核持ち込み継続を協議

民主党政権下、密約調査に「憂慮」


 ウィキリークス米秘密公電公開

 民主党・鳩山政権が2009年に開始した日米核密約に関する調査に対して、日米の当局者が米核戦略への影響を「憂慮」すると同時に、調査結果公表後も日本への核持ち込みを継続する方法を協議していたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」が7日、ホームページで公開した米秘密公電で明らかになりました。

 鳩山政権が密約調査を表明したのは09年9月。11月27日には有識者委員会を発足させ、翌年3月に報告書を発表しました。

 米秘密公電の一つは、この有識者委員会発足当日のもので、ズムワルト駐日米公使と外務省の梅本和義北米局長との協議内容を報告したもの。公使は「米抑止戦略の重要な要素は、米艦船への核兵器の搭載の有無についてあいまいさを維持することだ」と強調。「日本国内だけの問題ではなく、グローバルな米戦略に影響を与え、韓国を含む複数のアジアの隣国の利益にふれる」というルース駐日米大使の「憂慮」を伝えました。梅本局長も「普天間基地問題より難しい問題だ」と述べた上で、「現在の政治指導者は“密約”調査による影響を理解していない」として、民主党政権の動きに、やはり「憂慮」を示しました。

 その上で、梅本氏は、日米核密約の合意文書である「討論記録」が調査の結果、公表されることをにらみ、「(核搭載について)あいまいさを維持した米艦船の寄港にかんする新たなフォーミュラ(方式)を見いだす必要がある」と述べ、新たな核密約の合意を示唆していました。その後、日米間で核持ち込みに関する新たな合意がなされたのかは不明です。

 有識者委員会報告書は、「討論記録」の存在を認めたものの、これにもとづいて核搭載艦船や航空機が自由に日本に出入りできるのは米側の解釈であり、日米間でその解釈を共有したことはない、として「密約」であることを否定し、日本政府は破棄しませんでした。

 10年2月4日付の公電で、キャンベル米国務次官補が、米国の拡大抑止(核の傘)に関する協議での重要な柱の一つとして「米航空機および艦船が核兵器の搭載について肯定も否定もする必要なしに日本に寄港・着陸できること」と指摘し、いわゆるNCND(核兵器の有無について肯定も否定もしない)政策の維持に固執しました。

 米国は昨年4月6日、新たな核態勢見直し(NPR)を公表し、日本への寄港を繰り返していたロサンゼルス級原子力潜水艦に搭載していた核トマホーク(TLAM―N)の退役を決定しましたが、退役までの数年間は、いつでも搭載が可能です。また、米戦闘爆撃機による核持ち込みの危険は、何ら変わっていません。


 核密約 1960年1月19日の日米安保条約改定に先立つ1月6日、日米で頭文字署名した秘密の合意文書。「討論記録」という形式をとり、核兵器を搭載した米航空機・艦船の日本への飛来・寄港は事前協議の対象外にすることが明記されています。


核持ち込みは今日的問題

国際問題研究者 新原昭治氏が談話

 ウィキリークスが7日に公表した公電から、米国が日本政府による核密約の調査に、当初から強い懸念と関心を示すとともに、米艦船・航空機の核兵器搭載の有無について絶対に公にしないという原則(NCND政策)を絶対に維持するというメッセージを、日本側に繰り返し伝えていたことが裏付けられました。

 日本が核密約を今後も順守するよう迫ったものであり、米国による核持ち込みは決して過去の問題ではなく、今日的な問題であることが客観的に示されたといえます。

 一方、日本政府は梅本和義北米局長が、「日本は(非核政策をとる)ニュージーランドのようにならない」と表明し、非核三原則がじゅうりんされた現在の状態を放置するばかりか、今後も米国の核政策を受け入れるための新たな方法(フォーミュラ)まで提案するという、驚くべき対米追随の姿勢を示したことに、あぜんとさせられました。





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