2011年5月4日(水)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 1944年7月、サイパン島の生き残り日本兵は、アメリカ軍に突撃し散り果てました。ともに追い詰められていた日本人住民は、断崖から次々身を投げ、海を血で染めました▼サイパン「玉砕」です。日本軍は、サイパンの日本人を見捨てる決定を下していました。悲劇が本土に伝わり、なんと「愉快なことじゃ」と喜んだ人がいます。右翼の大物とみなされていた、頭山(とうやま)満です▼「道のために生き、道のために死す。忠に死し孝に死する…。これくらいの喜びはない」。天皇の家来の臣民として、忠孝をつくして死んでゆく。「そこに大いなる将来がある」と、彼はいいました▼戦中日本の生と死をめぐる思想を振り返ると、ウサマ・ビンラディンの言葉が重なります。ビンラディンが1996年に書いたとされる、アメリカに対する“聖戦宣言”があります。宣言は、アメリカとの“聖戦”に加わる戦士たちの死を延々と美化します▼「ウィリアム(ペリー米国防長官)よ。これらの若者は、お前が生を愛するのと同じように、死を求めている」「死は真理であり、究極の定め、生などいずれは尽きるもの」(『現代の中東』第35号)▼米政府は、01年9・11テロの首謀者ビンラディン容疑者を殺した、といいます。法で裁かず、10年近い戦争の末の殺害。犯罪者をテロ集団の“殉教者”にした感もぬぐえません。そして、テロリストに「若者たちは死後の楽園を信じている」(ビンラディン)といわせない、生の希望を生み出す宿題も残ります。





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