2011年5月4日(水)「しんぶん赤旗」

主張

温暖化対策

原発事故口実の後退許されぬ


 東日本大震災で原発建設が見直しを迫られているのを受けて、民主党政権が温室効果ガスの排出削減目標を放棄する動きを見せ、温暖化対策にかかわる市民団体などが警戒を強めています。日本が目標を放棄することは、待ったなしの課題である地球温暖化防止の国際交渉に新たな障害をもたらします。目標をあいまいにせず、大震災の経験に学んで揺るぎない対策をたてることによって、国際責任を果たすべきです。

国際交渉に新たな障害

 2020年までの温暖化対策の国連交渉は6年越しで行われ、11〜12月に南アフリカで開かれる会議(COP17)での決着をめざしています。民主党政権は温室効果ガスの排出を20年までに1990年比で25%削減の目標を国際公約とし、今国会に提出の地球温暖化対策基本法案にも明記しています。しかし、4月にバンコクで開かれた会議に出席した環境省の南川秀樹次官は、目標見直しが必要だとの考えを表明しました。

 これは東京電力福島第1原発の重大事故によって、同原発の廃止が必至になったばかりでなく、原発の新設と停止中の原発の再稼働も見通しが立たなくなっているためです。原発を20年までに9基も新設し稼働率も引き上げるという、原発に依存した温暖化対策はまったく破綻しています。

 東電は一方で、福島原発の停止によって低下した電力供給量を補うため、火力発電の増強をはかっています。これはCO2の排出を増やすことにもなります。07年の中越沖地震では、柏崎刈羽原発が被災し長期間停止したことから、やはり火力発電を増やし、その結果、東電の同年度の排出量は前年度比で30%も増えました。原発頼みでは、温暖化対策も進まないことが明らかです。

 温暖化対策を真に軌道に乗せるには、節電・省エネを進めるとともに、原発依存を根本的に改め、対策の重点を風力や太陽光などの再生可能な自然エネルギーに移す必要があります。

 原発依存は世界的にも時代遅れです。大震災以前から、原発増設よりも自然エネルギー開発が世界のすう勢でした。米ワールド・ウォッチ研究所の最新報告書は「再生可能エネルギーの増加分は過去15年間にわたって、原発の新設分を上回ってきた」と指摘しています。そのうえ、福島原発の事故を受け、ドイツをはじめ各国が「脱原発」を加速させています。

 長年の電力業界と政府一体の原発優先政策のもとでつくられた、自然エネルギーは取るに足りないかのような見方は、現実にもあっていません。

自然エネルギーに本腰

 環境省が4月発表した報告書は、太陽光や風力、中小水力、地熱による発電を最大限に開発すれば、1・4億キロワットの発電量が見込めるとしています。福島第1を含めた54基の既存原発の発電量の3倍にもなる計算です。技術開発でコストが下がれば、さらに普及できます。米国も「太陽光や風力のコストが化石燃料と同じかそれ以下になるようにしたい」(チュー米エネルギー長官)と、技術革新に意欲を示しています。

 自然エネルギー利用に本腰を入れることで、コスト高などの問題を克服し、温暖化対策を前進させることこそ本来の筋道です。





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