2011年4月5日(火)「しんぶん赤旗」

大震災からの復興に不可欠

個人補償 今こそ抜本拡充を

「阪神」後に被災者と共産党が動かす


 戦後、最悪の災害となった東日本大震災。壊滅的な打撃を受けた地域コミュニティーと生活再建のために、被災者への個人補償の抜本的拡充が改めて課題となっています。1995年の阪神・淡路大震災以来、被災者などが粘り強い運動でつくりあげてきた個人補償制度。国を動かしてきた歩み、日本共産党が果たしてきた役割を振り返ります。(斎藤瑞季、西沢亨子)


 1995年1月17日におきた阪神・淡路大震災は死者6434人、家屋全半壊(焼)約46万世帯という、その時点で戦後最悪の災害でした。

 個人補償制度は、被災者らの運動が超党派の国会議員を動かして実現したものです。日本共産党は、個人補償の必要性をいち早く提起し、被災者らの運動と連帯して積極的な役割を果たしました。

「自己責任」の姿勢突き崩す

 地震から8日目の1月25日、日本共産党は「国の責任で土地、家屋、家財に対する補償制度の創設を真剣に検討すべきだ」(立木洋・党副議長=当時=の参院本会議代表質問)と提起。26日には、穀田恵二議員が衆院予算委員会で「自力で生活を再建する基礎が失われている」と、国の責任での個人補償を迫りました。

 しかし、当時の自民・社会・さきがけの村山富市政権は、乱脈経営で破綻した金融機関に200億円もの公的資金をつぎ込みながら、「日本は私有財産制。個人の財産は個人の責任のもとに維持するのが建前」と被災者への個人補償を拒絶。低利融資しか実施しようとしませんでした。

 「個人資産の損害まで国や自治体が補てんするのは、筋が違う」(「日経」2月17日付社説)と説くメディアもありました。

 こうした政府の姿勢を突き崩したのは、被災者をはじめとした幅広い人たちと日本共産党の共同の運動でした。

 95年3月には、被災地の労働組合など45団体、医師、弁護士、研究者などが救援・復興兵庫県民会議を結成。署名や政府への要請、大集会に繰り返しとりくみました。

 96年1月には、医師会会長、大学学長など兵庫県内の著名48氏が公的支援拡充を求めるアピールを発表しました。また、作家の小田実氏(故人)らは、「被災地からの緊急・要求声明」(3月)で個人補償を訴え、5月には「市民=議員立法実現推進本部」を立ち上げて生活再建援助法案を公表、超党派議員に呼びかけをはじめました。

 日本共産党の志位和夫書記局長(当時)は小田氏らと懇談し、「力を合わせてがんばりたい」と協力を誓いました。党として生活再建支援法案の大綱を発表しつつ、超党派の国会議員に共同を呼びかけ。「被災者支援法実現・議員の会」で法案を練りあげ、97年5月には、6会派共同で法案を参院に提出しました。

共産党善戦 動きを加速

 こうしたなかで、96年の参院補選や97年の神戸市長選で、日本共産党候補や市民団体とともに日本共産党が推した候補者が大善戦したことも、政府に衝撃を与え動きを加速させました。98年の参院選では、日本共産党の大沢たつみ候補が自民現職を破って当選するにいたりました。

 世論に押された自民党は98年、阪神・淡路大震災の被災者には適用されず、所得や年齢の制限が多いなどまったく不十分ながら「被災者生活支援法」を提案せざるを得なくなりました。

 その後も、被災者と日本共産党などは拡充を求めて運動と論戦を続け、2度の法改正を実現。2004年には最高額を100万円から300万円に引き上げさせ、07年には、支援金を住宅本体に使うことをかたくなに拒んできた自公政権の姿勢を変えさせ、使い道や所得、年齢制限を撤廃させました。

大胆な支援 政治の焦点に

 「私たちは、阪神・淡路大震災の経験をへて、『生活再建と地域社会の再生こそが復興の土台』という見地が大切だと考えています。とくに個人補償の抜本的拡充が必要です」

 日本共産党の志位和夫委員長は、3月31日の菅直人首相との会談でこう述べて、現行で全壊でも300万円にとどまっている支給額の大幅引き上げを提起しました。これに対して、菅首相も「私どもも引き上げが必要だと思う」と表明しました。

 被災地の復興をどう進めるかを考える上で、個人補償の拡充は政治の焦点になっています。

 今回の大震災では、3日現在で家屋の全壊・流失4万5776戸、半壊8796戸に及んでいます。しかも、地域ごと津波で押し流されたところもあり、地域コミュニティーの再建も課題です。

 被災地はこの間の地域経済の衰退、高齢化や過疎化などの影響を受けてきた市町村で、もともと財政基盤が弱かった地域です。復興のためには「生活再建」「地域社会の再建」を土台にした国家的プロジェクトが必要です。そのためにも、現行法の枠を超えた個人補償の抜本的拡充で住宅再建の見通しをつけることが求められています。

 被災者生活支援制度自体の改善も必要です。同法はこれまで国民的な運動によってつくられ改善されてきました。しかし現行制度では、仕事を支える店舗や施設は支援の対象にならないなど、多くの課題を抱えています。

 いまこそ個人補償を抜本的に拡充し、被災地復興のために全力を尽くすことが求められます。


 被災者生活支援制度 自然災害によって住宅が全壊または半壊して大規模な補修をしなければ住めないなど、生活基盤に著しい被害を受けた人に支援金を支給する制度です。都道府県が拠出した基金を活用し、支援金の半分に相当する額を国が補助します。

 住宅の被害程度、再建方法に応じて支給額が異なります。現行の制度では、住宅が全壊した世帯には最高300万円が支給されます。

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