2011年3月11日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「新卒未就職者」

採用枠拡大に大胆に踏み出せ


 大学や高校などの卒業シーズンを迎え、各地で若者が就職や進学に旅立っていますが、その半面、卒業しても就職できない「新卒未就職者」がことしも大量に生まれようとしています。卒業を目前に、大学の4年生や高校の3年生が就職先を求めて企業訪問を続け、ハローワークの窓口さえ訪れている姿には胸が痛くなる思いです。

 就職できない新卒者をひとりでも減らすために、政府や自治体、学校当局が手だてをつくすとともに、採用側の企業とりわけ大企業に、思い切って採用枠を拡大させることが重要です。

就職「超氷河期」の様相

 ことし3月卒業予定者の就職率は、大学は昨年12月1日現在で68・8%、高校は同11月末現在で70・6%でした。ことしになってからの数字はまだ発表されていませんが、大学は史上2番目に低い水準だった昨年(4月1日現在の就職率が91・8%)をさらに下回る傾向で、このままでは昨年以上の「新卒未就職者」が生まれることが懸念されます。文字通り就職「超氷河期」の様相です。

 各学校や自治体などでも、「新卒未就職者」に向けた対策を強めるところが相次いでいます。就職のために残留を希望する学生には在学延長を認め授業料などを割り引く大学、新卒者や卒業間もない学生が就職活動をしながら企業などで研修できるように支援する自治体などです。

 しかし、「就職浪人」や既卒者への採用条件はきびしく、こうした措置だけでは十分といえません。家庭の事情で卒業してすぐに働かなければならないなどの理由で、不本意ながら「非正規」の職場などで働かなければならない新卒者も出てきます。大学や高校を卒業しても能力が十分生かせないのは社会にとっても大きな損失です。卒業と同時に「失業者」などということがないように、就職できない新卒者のための対策を、国や自治体、学校、企業が力を合わせて進めるのは不可欠です。

 日本共産党の笠井亮衆院議員や宮本岳志衆院議員が国会でも追及したように、問題の根本には、巨額のもうけを上げ内部留保もためこんでいる大企業が労働者を増やさず、採用を減らしていることがあります。たとえば、愛知県など中部地区の採用内定率が低いのは、トヨタ自動車の採用手控えが影響していると指摘されています。

 大企業が巨額の利益や内部留保を還流させ、雇用の拡大・安定や下請け企業の経営に役立てるのは社会的な責任です。日本共産党の追及もあって政府も企業に採用枠の拡大などを求めていますが、あくまでも「要請」だけで、企業任せの態度を抜け出ていません。いまから新卒者を追加採用することを含め、大企業に採用枠を拡大させることは急務中の急務です。

採用活動の見直しも必要

 新卒者の採用をめぐっては、企業の採用が新卒者に偏りすぎていることや、もともと採用活動の開始時期が大学なら3年生の春と早すぎ安心して勉強できないなど、さまざまな問題が起きています。企業の利害からだけの採用活動は、根本から見直すべきです。

 何はともあれ、まず急がれるのは就職できない新卒者への対策です。学生の意欲と能力を引き出すためにも、大企業がまず採用枠の大幅拡大に踏み出すべきです。





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