2011年3月9日(水)「しんぶん赤旗」

特養待機解消 国責任で増設図れ

参院予算委 山下芳生議員の質問


 日本共産党の山下芳生議員が7日の参院予算委員会で行った質問は次の通りです。


山下 特養整備追いつかない。“介護退職”社会どうする

首相 社会全体で対応に努力したい

写真

(写真)パネルを示して質問する山下芳生議員=7日、参院予算委

 山下芳生参院議員 日本共産党の山下芳生です。高齢者の介護について質問します。2000年4月に介護保険制度がスタートして10年が過ぎました。この10年間で特別養護老人ホームはどのくらい増えたか、全国の特養ホームの定員と待機者の推移を報告してください。

 細川律夫厚労相 お答えします。特別養護老人ホームの定員数は、2000年度で約30万人、09年度では約42・1万人となっております。

 入所の申し込み(待機者数)につきましては、00年度の数字の把握してませんけれども、06年度で約38・5万人、09年度は全体で約42・1万人となっています。この42・1万人のうち、在宅ではない方が約22・3万人、要介護1から3までの方が24・3万人で、他方、入所が急がれる在宅で要介護の4または5の方が6・7万人となっています。

 山下 日本共産党は、10年前に全都道府県に特養ホームの待機者数を聞きました(図1)。合計10万4599人でした。ですから、待機者は10年前の10万人から42万人へと4倍に増えたことになります。入所希望者の増加に特養の整備が全く追い付いていないということです。

 3年も5年も待たないと入れない。家族の介護のために仕事を辞めた人は年間何人になりますか。

 厚労相 家族の介護、看護のために離転職いたしました雇用者は、06年10月から07年の9月までの1年間で約13万人であり、仕事と介護の両立については少子高齢化が進む中でますます重要な問題となっております。

 山下 十数万人が毎年辞めています。親が倒れると約2割の人が仕事を辞める。高齢者介護というのはまさに現役世代の問題だと思います。

 NHKの「ミドルエイジクライシス」という特集で、先日、都内に住む44歳の男性が紹介されておりました。75歳の父親と2人暮らし、2年前に母親が突然亡くなり、認知症が進んだ父親を1人で介護する生活になりました。仕事との両立は次第に困難になり、辞めざるを得なかった。

 2人の生活費は父親の月10万円の年金のみとなりました。男性は、父の食事の世話、洗濯その他の家事をどうやって1日こなしていくか、それしか頭にないです、正直、結婚もしたいです、こう言っていました。深刻だなと思いました。たとえ介護から解放されたとしても、この男性のその後の人生はどうなるのか。

 総理は、厚生大臣時代、介護を社会化する、こう言って介護保険の導入を推進されました。現実はどうか。親の介護のために40代のミドルエージが仕事も結婚も諦めざるを得ない事態が広がっております。こんなことで日本社会はどうなると思われますか。

 菅直人首相 介護保険制度が導入される段階の議論の多くは、家庭で、例えば嫁とかあるいは娘とか、女性が多かったですが、それが面倒を見るべきだという議論と、社会的に面倒を見ようという議論があって、社会的に見ようということで介護保険制度が導入されたと思います。

 高齢化がさらに進んで、場合によっては高齢者の独り暮らし、あるいはご指摘のように家族も少ない中で、きちっと社会全体がこういうケースについても対応できるような、そういう方向でさらなる努力をしなければならないと考えています。

図

(図1)

山下 健康悪化でも放置。「寝たきり専用住宅」の把握を

厚労相 調査させていただきたい

 山下 42万人の特養ホームの待機者がどういう状態にあるのか。もう一つ紹介したい。

 昨年5月の東京新聞、中日新聞に衝撃的な記事が載りました。

 口から食事を取れず、鼻やおなかに管を通す経管栄養の要介護者だけを対象に入居者を募るアパート、自称寝たきり専用賃貸住宅、略して「寝た専賃」と言うようですが、これが急増しているという記事です。「愛知、岐阜両県の計12カ所にあり、高齢者ら約200人が入っているとみられる」とありました。

 総理は、こうした寝たきり専用賃貸住宅なるものがあることをご存じでしたか。

 首相 今回、質問をいただくまでは知りませんでした。

 山下 先日、私、寝たきり専用賃貸住宅、2カ所見てまいりました。案内板には「寝たきり状態で常時介護が必要な方」とか、「寝たきり老人専用住宅」と書かれてありました。

 玄関の中までは入ることができました。コの字形の廊下の両側に恐らく4畳半ぐらいの広さと思われる居室がずらっと並んでおりました。全部で17室です。私が訪ねたときには、そこには職員の方は1人しかおりませんでした。夕食どきだったのに、食事を準備する人の気配も食事のにおいも全くしませんでした。なぜなら、口から食事を取れない、経管栄養の人ばっかり入居させているからです。だから、食事の介助の必要もない、人も要らないんですね。

 ここでは、指定された事業所から看護師さんがやってきて、1日3回、順番にチューブで栄養剤を注入するだけなんですね。そういう高齢者だけをわざと集めているわけです。総理、こういうやり方、いかがお思いですか。

 首相 この経管栄養になっている人たちの在り方について、これもいろいろな議論がありますけれども、ご指摘のように、そういう人たちだけを集めて看護ないしは介護をするというのは、そのサービスがきちんとしたものであればそれは一つの在り方かと思いますけれども、そのサービスの内容によるのではないかと思います。

「承諾書」が示すビジネスの実態

 山下 サービスの内容によるということですが、この寝たきり専用賃貸住宅に入居する際、入居者の家族が提出する承諾書なるものを見て驚きました。これです。(図2)

 民間の賃貸住宅といいながら、おむつの持ち込みは禁止なんです。それから、医療、看護、介護のサービスもおむつも全て指定された提携業者と契約しなければならない。

 調べてみますと、賃貸住宅の設置者と看護、介護の事業者は全く同一の住所にありました。行ってみますと、郵便受けも共用でした。それぞれの会社名が紙に書かれて、ぺたりぺたりと並んで貼り付けてありました。

 さらに、ケアマネジャーも指定された中から選ばなければならない。要するに、賃貸住宅の設置者と、看護、介護の事業者、ケアマネジャーは一体だということです。

 賃貸住宅に寝たきりの高齢者の方ばっかりを集めて、そこに身内の事業者から看護や介護のサービスを提供して利益を上げる仕組みであり、ビジネスだということです。

 さらに承諾書を見ますと、このビジネスの本質が浮き彫りとなります。ここに、要介護認定5に変更があった場合、個人の負担が増えますとありますね。要するに、寝たきりでなくなったら、かえって手間が掛かるので料金を上げるということです。それから、病院へ入院した場合、アパートの契約は解除されます。アパートを追い出すということです。

 なぜか。介護保険から金が入ってこなくなるからです。訪問看護1回20分で2850円の介護報酬になります。これを1日3回やりますと、月二十数万円になるわけですね。家賃ではなくて、こっちの方でもうけを上げているということであります。

 そして、一番最後、健康状態が悪化しても病院に搬送しても改善は困難と、一方的に判断されるという、ひどい同意書です。

 これら一つ一つ家族が承諾をして、署名捺印(なついん)させられて入居をする。

 これ全体を見て、これが介護、これが医療と言えるのか。お年寄りの人生の最後を食い物にするやり方ではないかと、私は思いましたけれども、いかがですか。

 厚労相 老人福祉法におきます有料老人ホームの定義がございまして、その定義の中には、入浴、排せつ、もしくは食事の介護、2番目として食事の提供、3番目として洗濯、掃除等の家事、そして健康管理のいずれかを自ら、または委託して提供する事業を行う施設となっています。今のこのパンフレットなどでこれが有料の老人ホームに該当するかどうかについては、これは個々の施設のあれをいろいろと調査もしなければ分からないわけですけれども、その運営実態の把握については都道府県に有料老人ホームの該当の有無を判断をしていただくということになっておりまして、いずれにしても、いろいろな不正の請求があるとかいうようなことになれば、しっかり対処をしなければいけないと思っています。

 山下 総理、いかがですか。こういうやり方が人間の尊厳を保障するやり方と思われますか。

 首相 確かに、そういう形で本当にご本人のためになるのかということは考えなければならない、こう思います。

 山下 これが今広がりつつあるということを危惧しております。政府として実態把握すべきじゃありませんか。

 厚労相 これは私どもの方でどういう具合になっているか調査もさせていただきたいと思います。

療養型病床を減らした弊害

 山下 どうしてこういうビジネスが広がるのか。

 寝たきり専用賃貸住宅を経営している会社のホームページを見ました。こうあります。

 数に限りのある老人介護施設や有料老人ホームに入所できず療養型病床も減っている中でますます在宅介護の必要が高まります、その上、団塊世代の高齢化の波も押し寄せてきます、しかし在宅の環境での介護は家族にとっても要介護者本人にとっても負担が大きく非常に困難です、そこで私たちは寝たきり老人専用住宅の開発に成功しました。こういう表現ですね。

 まさに、特養ホームを増やさず療養型病床を減らしてきたこれまでの政府の政策のおかげでこのビジネスが成り立っているというようなものですね。政治の責任は重大だと思います。総理、そう思いませんか。

 首相 ご指摘はそれぞれごもっともなわけでありまして、そういうことに対してよりしっかりしたサービスを提供できる体制をどのようにしたらつくれるのか、あるいは経管での栄養補給という形がどういう形で考えるべきなのか、多くの問題を含んでいると思っています。

 山下 ご家族の思いも大変複雑だと思います。ほかにどうしようもなくてこうした寝たきり専用賃貸住宅のようなところを選択せざるを得ない方もあると思います。

 解決の道は一つだと思います。ちゃんとした受け皿をしっかりつくるということだと思います。厚労省、特養ホーム整備の国から都道府県への1人当たり補助単価はどうなってきましたか。

 厚労相 特別養護老人ホームにつきましては、1999年度から01年度におきましては、4人部屋の特養老人ホームに対して2分の1の国庫負担割合として1床当たりに換算しまして360万円でございます。

 02年から個室ユニット型の特養ホームを中心に補助を行っておりまして、入居者の方に利用料としてご負担をいただく居室等を除いた部分の2分の1に対する補助となったところです。このため、02年度からは1床当たり240万円、03年からは235万円、04年から05年度までは225万円となっています。

国は補助金を減らし続けた

 山下 国の補助金は1999年度からずっと減らされてきたんですね。その結果、都道府県の補助金がどうなったか。パネル(図3)のように、東京都も大阪府も都道府県の補助金は半分に減っちゃいました。特養ホームの建設に国からブレーキをかけてきたということになっているわけです。もうブレーキやめてアクセルを踏み込むべきじゃないですか、総理。

 首相 一般的に特養あるいはこうした施設の不足はおっしゃるとおりでありまして、それを在宅、あるいはさらに言えば24時間介護といったいろいろな仕組みを関係者が努力をされております。しっかりした、こういう方々に対するサービスが提供できる在り方を目指していかなければならない。この老人ホームの施設整備ということもありますが、あるいは在宅という問題も含めて、トータルとしてそういう体制が必要だということを感じております。

図

(図2)

図

(図3)

山下 保育所では成果。特養でも未利用国有地など活用を

首相 検討項目に入れて考える

 山下 民主党はマニフェストでどう言っていたか。40万人の待機者を解消する、3倍のスピードで特養ホームを増やすと、こう言っていたんです。

 例えば、定員100人の特養ホームを年間800カ所、8万人分つくれば5年間で40万人の待機者を解消できます。必要な国の予算は約4000億円でできるんですね。法人減税、証券優遇税制、2兆円になると言われていますけれども、そのわずか5分の1で、5年間で待機者を解消できる特養の整備ができるんですね。これこそ私は生きた税金の使い方だと思っています。

 もう一つ、特養の整備について。都市部では土地の確保が大変大事なカギとなります。わが党は未利用の国有地を積極的に活用すべきだと提案し、保育所では既に成果が出ています。特養でもやるべきじゃないですか。

 野田佳彦財務相 未利用国有地を単に売却ではなくて定期借地権を使って貸し付けを行うという方針は、昨年6月に新成長戦略の中でまとめました。

 ご指摘のとおり、保育分野では東京の世田谷含めて五つの事例が決定をしています。この対象は、委員ご指摘の特別養護老人ホームを含む介護分野も入ってございまして、今、複数のご要望が出てきていますので、地方公共団体としっかりと調整をしていきたいと思います。

 山下 自治体からは貸付料の減額をという要望が出てます。そもそも特養を運営する社会福祉法人が年間数千万円もの貸付料を払えるはずがありません。ですから、結局自治体が負担をして貸付料を安くするしかないんですね。それを全部自治体に負担させて、国は時価でしか貸しませんということでいいのか。例えば、国の制度として特養の用地費への補助をつくればそれに代わる措置として国有地の貸付料を減額することも可能になります。

 ここは政治が知恵を出すところだと私は思いますが、いかがでしょうか。

 財務相 財政法においては、国有財産は適正な対価、すなわち時価による譲渡または貸し付けが原則とされており、社会福祉目的で国有財産を活用する場合であってもこれ全面積時価としているところです。賃貸料を下げることについては、未利用国有地が地域的に偏って存在することから、地域間で不公平が生じることにも留意が必要だと思います。

 山下 財務省の答弁はこうなっちゃうんですよ。だから政治が知恵を出すべきじゃないかと言っているんですね。

 用地費への補助を全国でつくればその代替として下げることができるようになる。総理、検討すべきじゃないですか。

 首相 東京をはじめ大都市圏は極めて高齢化が急速に進むという認識を持っております。例えば東京でいえば東京都内だけで対応するのか、場合によっては他の地域にも協力を求めていくのか、いろいろな知恵の出し方があると思います。

 その中での公有地の利用ということも一つの、いろいろな条件は今財務大臣からもありましたが、ルールはありますけれども、いろいろ知恵を出すという意味では検討をすべき項目の中に入れて考えてみるべきだと思っています。

 山下 誰もが安心して老後を過ごせる社会にしてほしい、これが世代を超えた国民多数の願いだと思います。それに本気でこたえる政治をつくるために日本共産党は力を尽くすことを表明して、質問を終わります。





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