2011年3月1日(火)「しんぶん赤旗」

ベトナム インフレ対策 本腰

経済の重点“農”に


 【ハノイ=面川誠】ベトナム政府は2月24日、インフレ抑制を主眼とした総合政策を発表しました。政府歳出の削減と金融引き締めを進める一方で、社会福祉にも配慮。経済成長率の数値には表れない「持続可能な成長」を目指すとしています。


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(写真)電車、地下鉄がないハノイで庶民の足はもっぱらバイク。給油客が絶えないガソリン スタンド=2月27日、ハノイ(面川誠撮影)

 ベトナムでは2月の消費者物価上昇率が年率換算すると12・24%に達する見通しです。グエン・シン・フン第1副首相は「インフレ抑制を最優先する」と述べ、「緊縮財政でも福祉の削減は行わない」と強調しました。

 総合政策は、公共事業の削減や新規調達の延期によって政府歳出を10%削減します。国内生産が可能な製品は、安易に輸入に頼らず国内増産を奨励し、特に食料価格高騰への対策として、農産物の増産を急ぎます。

 また、信用成長率(資金貸出成長率)目標を23%から20%未満に下方修正する一方で、貸出金利を引き下げて、農業生産などに優先的に振り向けます。

 国営英字紙ベトナム・ニュースは、「昨年12月のベトナム支援国会合での強い助言を受けて、経済成長での重点の置き所を大きく変えた」と指摘します。

 同会合では多くの支援国・国際機関が、政府のマクロ経済調整機能の弱さに懸念を表明。2000〜10年の平均経済成長率が7・26%の高さを維持しているにもかかわらず、▽インフレ抑制効果の弱い金融政策▽不透明な予算執行▽多数の無駄な公共事業―が続けば、「持続可能で安定した経済成長は不可能」と警告しました。

 総合政策で論議を呼んでいるのは、「政府の財政負担軽減、エネルギー節約、生産性向上」を理由にした燃料価格と電気料金の値上げです。ガソリンなどの燃料価格は24日に平均18%引き上げられ、3月からは電気料金が15・28%上がります。

 ブー・バン・ニン財務相は、政府の財政負担が年間75兆ドン(約2924億円)に達すると指摘。フン副首相は「低価格のせいでエネルギー効率の悪い古い生産設備の更新が進まない」と述べ、生産力向上を阻害していると指摘しました。

 値上げで懸念されるのが庶民生活への悪影響です。政府は貧困世帯に電気料金の割引価格を適用するほか、月額3万ドンの手当を支給する方針を明らかにしています。手当額は30キロワット時の電気料金に相当します。

 ただ、燃料、電気料金の大幅な値上げがインフレを後押しする懸念があり、生活苦を軽減する効果は限定的とみられています。





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