2011年2月22日(火)「しんぶん赤旗」

主張

爆音賠償拒否

アメリカの横暴勝手許さない


 米軍機による爆音被害が全国各地で大問題になっています。見過ごせないのは、嘉手納、横田、厚木の各米軍基地の数次の爆音訴訟で裁判所が命じた損害賠償が総額198億円にもなっているのに、いまだにアメリカは支払いを拒否し続けていることです。

 3月には嘉手納基地周辺の「受忍限度を超える」地域に住む2万2千人以上が第3次爆音訴訟を起こします。しかし、いまのままでは、数百億円にもなるといわれる損害賠償もまた、アメリカは支払いを拒否します。日米地位協定さえ無視したアメリカの横暴勝手を許すわけにはいきません。

地位協定の支払い規定

 嘉手納、横田、厚木など米軍基地周辺の多くの住民は、家族のだんらんを妨げ安眠さえ奪う米軍機の爆音被害をなくすため、少なくとも夜間・早朝の飛行差し止めと、爆音被害に対する損害賠償を求めて裁判闘争を続けています。爆音は、楽しいはずの家族の会話や勉強を妨げ、生活を根底から破壊する「音の拷問」です。裁判所が住民を人とも思わない米軍の非人道的な行為の不法性を認め、損害賠償を命じているのは当然です。

 日米地位協定18条は、「合衆国のみが責任を有する場合」は「裁判所により決定された額」の75%をアメリカが支払い、残り25%を日本が支払うと明記しています。米軍機の無法な飛行はアメリカのみが責任を負う行為そのものです。地位協定に従って75%をアメリカが支払うのは当然のことです。

 ところがアメリカは、日本政府だけでなくアメリカに対しても夜間・早朝の飛行差し止めと賠償を求めた1996年の横田基地爆音訴訟のさい、日本政府に提出した応訴拒否の口上書で、裁判所の判決に「一切従わない。賠償金の負担もしない」という方針を伝えてきました。みずから締結した地位協定さえ無視するなど前代未聞です。アメリカが負担しなければ、日本に損害賠償の全額を負担させることになります。こんな理不尽な言い分は絶対に認めるわけにはいきません。

 日本政府の立場からいっても、アメリカの言い分を認めるのでは、地位協定を結んだ意味がないことになります。日本政府はアメリカの不当な態度を批判せず、損害賠償額の分担をどうするかの「日米協議」を続けているというばかりです。問題を先送りにするのは、アメリカの思うつぼです。

 アメリカに抗議もせず、黙認したことがアメリカを増長させ、賠償拒否を続けさせている原因なのは明白です。アメリカの言い分に合わせて地位協定をあいまいにするような卑屈な対応をあらため、地位協定の規定通りに支払うようアメリカと正面から交渉することこそ政府の責任です。

飛行中止が欠かせない

 米軍機による爆音被害は、憲法が国民に保障している「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活」(25条)を根本から破壊する蛮行です。平穏な生活を守るため、せめて夜間・早朝の飛行差し止めをという住民の悲痛な訴えを、政府は受け止めるべきです。

 アメリカに被害を償わせるだけでなく、爆音被害そのものをなくすために政府は力をつくすべきです。爆音被害などの基地による痛みを一掃するため、米軍基地の撤去をめざすことが重要です。





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