2011年2月13日(日)「しんぶん赤旗」

エジプト

人権無視と富収奪に国民の怒り

民主化プロセス これから正念場


 エジプトの民主化を求め、1月25日に開始された反政府デモが、18日目についにムバラク大統領を退陣に追い込みました。強権的な長期政権が国民の平和的なデモで倒壊させられたのは、1月のチュニジアに続いて2カ国目。国民の力こそが政治を動かすという教訓を示しました。

「100%の変化」

 ムバラク政権の退陣を求める反政府デモは15日目の8日、これまでデモに参加していなかった一般の人々も参加する新たな段階に達していました。このデモ後、アルアクバル紙のレダ・マハムード記者は本紙に「エジプトは1月25日以降、完全に変わった。100%の変化がある」と述べていました。いまでは「革命」という言葉が普通に飛び交っています。

 反政府デモはチュニジアの政変にも触発されたともいわれますが、根底には警察権力による横暴、人権無視に対する積もり積もった国民の怒りがありました。

 エジプトの年配者の中には、現在の権力者支配が、国王を倒した1952年の「エジプト革命」以前の状態に酷似していると指摘する人もいます。52年以前の社会で大土地所有者など有力者を指す「バーシャ」という尊称が「革命」後、廃止されたにもかかわらず、その後復活し、今では警察官の前に付ける敬称として使われています。

 警察権力に不当な人権無視の権力を与えているのが、81年の導入以来、ムバラク政権の下で継続されてきた非常事態令です。

 ムバラク政権への国民の不信と怒りは、経済格差の根源にある大統領と政権与党、それにつながる財界有力者による国民の富の収奪にも向けられていました。

一本化が課題

 ムバラク氏は辞任を拒否した10日の演説で、自分がイスラエルとの戦争で国を守ったことを力説し、国民のなかにある「英雄像」に訴えかけました。しかし、イスラエルをエジプトの「敵」とする見方が大多数の国民の中で、なぜイスラエルの全消費量の40%にもなる天然ガスを国内よりも安い価格で提供してきたのかという不信もありました。

 今回全権を掌握したのは軍最高評議会ですが、民主化プロセスの全容が明らかになるのはまだ先のことです。今後、ムバラク大統領の即時退陣を要求し、デモを展開してきた勢力の民主化に向けての要求が一本化されるのか、最高評議会の暫定統治のもとでそれらの要求がどれだけ貫かれるのか、これからが正念場です。(カイロ=伴安弘)





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