2011年2月13日(日)「しんぶん赤旗」

主張

駅のホームドア設置

「欄干のない橋」では困る


 列車があげるごう音と風圧、けたたましい構内放送と発車メロディー、人とぶつからずに歩くことが難しいほどの大混雑。視覚障害者の人たちにとって、駅のホームがどれほど危険な場所か、想像に難くありません。

 ホームからの転落、列車との接触事故が多発し、痛ましい犠牲者も相ついでいるというのに、事故防止のための対策は遅々としてすすんでいません。「欄干のない橋」にもたとえられる駅ホームから「落ちない駅ホーム」へ、可動式ホーム柵、ホームドアの設置を飛躍的にすすめることが、強く求められています。

転落事故防止の切り札

 JR東日本の山手線目白駅で1月16日、全盲の男性がホームから転落し、亡くなる事故がありました。全日本視覚障害者協議会によれば、1994年からの16年間に、転落や電車との接触で亡くなった視覚障害者は41人にのぼります。同協議会の過去の調査では、都内に住む視覚障害者100人のうち「ホームから転落経験がある」のは50人、全盲の66人では65%だったといいます。

 安全対策としていま重視されているのが、ホーム要員の確保と合わせ、ホームに防護柵を設けて乗降時にドアを開ける可動式ホーム柵、ホーム全体をおおって乗り越えも防ぐホームドアの設置です。実際、可動式ホーム柵などがある駅では「転落による事故は皆無」(国土交通省)だといいます。

 転落や接触による人身事故の9割は、1日当たりの平均的利用者数5千人以上の駅で起きています。国の法律は、こうした駅にホームドアや可動柵を設置することを目標としています。しかし、対象となる2800余の駅のうち、ドアなどを設置しているのは約500駅。今後の整備予定も、新たな設置を計画しているのは全国205の鉄道事業者のうち、JR各社や大手私鉄など14社で、計24路線285駅をあげているにすぎません。

 日本共産党は早くから、可動柵設置など、移動の自由と安全をまもる対策を求めてきました。国や鉄道事業者は、「非常に多額の資金がかかる」「列車の規格がばらばらで技術的に困難だ」と消極的でした。いずれも、その気になれば克服できない困難ではありません。こんな口実で、最も効果が高く、必要性の強い安全対策をずるずる先送りすることは許されません。

 事故の犠牲者は視覚障害者だけではありません。混雑のためホームから押し出されて、人に突き当たられて、酔客や気分が悪くなってなど、実際に多くの人がさまざまな状態でホームから転落し、犠牲になっています。これほどの危険を、当たり前のように、いつまでも続けるわけにはいきません。

安全の公共交通を

 国土交通省もようやく鉄道事業者などを集めた検討会を設置し、今夏をめどに、整備促進策をまとめるとしています。

 交通バリアフリーの実現へ、各地で障害者や幅広い住民が共同し、自治体や鉄道事業者との交渉を重ね、駅のエレベーターやエスカレーターの設置などの改善を実現しています。日本共産党も、この課題に全力をあげてきました。

 この力をさらに広げ、だれもが安全、安心で、命をまもる公共交通へ、ホームドアの整備を大きくすすめるときです。





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