2011年2月4日(金)「しんぶん赤旗」

主張

鳥インフルエンザ

全国どこでもの危険に対策を


 高病原性鳥インフルエンザへの感染が各地で相次ぎ、養鶏農家の経営を直撃するとともに、一部で鶏肉や鶏卵価格への影響も懸念されています。南下してきた渡り鳥が感染源になったとみられ、感染は全国どこでも起こりうる、かつてない事態です。野鳥が感染していないかの監視はもちろん、全国的な防疫体制の強化や、被害を受ける養鶏農家への補償などの支援が求められます。

感染を封じ込めるため

 高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)はきわめて毒性が強く、養鶏農家などでは一気に感染が広がることもある危険な病気です。加熱処理さえすれば食肉や鶏卵を通じて人に伝染することはないといいますが、東南アジアなどでは鳥のフンなどを吸い込んだとみられる人への感染例がでており、神経質になりすぎる必要はありませんが、十分な警戒が大切です。

 各地の養鶏場で鳥インフルエンザへの感染が見つかり、数万羽もの鶏が殺処分されているという報道には胸が締め付けられる思いです。しかし、周辺の養鶏農家や人への感染の危険を考えれば、やむをえないものがあります。感染の広がりを封じ込めるために、対策をつくすことが重要です。

 見過ごせないのは、昨年末以来各地で相次いだカモや白鳥など野鳥の感染に続いて、今年になって養鶏農家での感染が全国的な広がりを見せていることです。

 これまでも国内で鳥インフルエンザの感染はありましたが、いずれも地域が限定されており、今回のように全国に広がることはありませんでした。感染ルートも従来多発していた東南アジアからとみられるものが多かったのに、今回はシベリアなど北からの渡り鳥が原因とみられています。カモなどの渡り鳥は毎年全国各地に飛来しており、鳥インフルエンザはいまや、全国どこでも感染が起こりうるものとなっていることを、直視する必要があります。

 渡り鳥への感染は、死亡した野鳥が見つかることではじめて感染していたことが分かる例が大半です。政府は情報を明らかにして養鶏農家などに警戒を呼びかけるとともに、国民にも広く協力を求めていく必要があります。野鳥にみだりに近づかず、とくに死んだ野鳥などには手をふれないことも重要になります。

 養鶏農家の場合、鶏舎を防護ネットで覆い、ネズミなど小動物の出入りも防ぐ、人の靴や車のタイヤなどに付いてウイルスが持ち込まれないよう鶏舎の出入り口などを石灰などで消毒する等の対策がとられています。しかし、いずれも万全とはいえません。

農家への補償と支援を

 防護ネットなどの費用や消毒などの手間、さらにはいったん感染した場合鶏舎のすべての鶏を殺処分することになるため、経済的にも肉体的・精神的にも、農家の負担は甚大なものがあります。感染が広がっている宮崎県では噴火災害の影響もあります。農家と関連自治体への支援は欠かせません。

 渡り鳥は暖かくなれば北へ帰りますが、国内でもウイルスが増殖する事態になれば年間を通じて感染が拡大する危険もあります。感染ルートの解明や感染を予防する技術の開発を含め、感染を防ぐ対策をアジアの国々とも連携して充実させていくことが不可欠です。





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