2011年1月31日(月)「しんぶん赤旗」

生保調査部

任務は政官界工作

業界利益実現へ奔走


 保険金不払いをめぐる政界工作が問題になっている生命保険業界で、大手生保各社の調査部が「政治家への対応」を主任務として、組織的、系統的に政界工作を行っていたことが30日、日本共産党の大門実紀史参院議員が入手した資料と本紙の取材でわかりました。(生命保険「不正」取材班)


 今回判明したのは、調査部の日常的な業務の実態です。

 調査部は、政界や業界の監督官庁である金融庁や財務省、業界団体である生命保険協会などを情報収集の対象にしていました。

 調査部には、政界工作を専任とする担当者が配置されています。

 大手生保の「調査部の具体的な業務について」と題した内部文書によると、政界工作担当者の仕事は、政治家への「税制要望等に関する活動」「生命保険制度改革に関する活動」「協力議員との関係の維持」「選挙対応」となっています。

 政界工作は大手生保4社(日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命)が連携して行っていたことが指摘されています。4社で国会議員を「主要議員」や「若手議員」など10ランクに格付け。ランクに応じて、パーティー券の購入額や接待の規模を決めていました。

 また内部文書によると、調査部では、金融庁の監督局保険課などを情報収集の対象にしていました。金融庁の監督指針や保険商品の認可などの情報を探る目的があったとみられます。

 内部文書では、「人事異動のメンテナンス(手入れ、管理のこと)」を業務の一環に掲げ、金融庁や財務省を中心に毎年6月ごろの人事異動をフォローすることも仕事の一つとしています。

 生保業界のある関係者は「調査部の主な任務は業界の利益を大手4社で協議して実現することだ」と証言します。

 こうした調査部の活動は、1998年の大蔵省汚職で問題となった銀行業界の「MOF担」に類似。業界と政官界の腐敗の温床となっています。

 また、業界の関係者は「4社で秘密裏に協議のうえ、対政治家、対金融庁対策を練っている。調査部の人間は『清濁併せのむ』という言葉をよく使う。業界の暗部をいかに表沙汰にせず、ごまかすかがミッション(使命)になっている。日生の次期社長や第一生命の社長も調査部畑の出身だ。政界工作担当部門が重用されていることの表れだ」と指摘します。


 MOF担 監督官庁だった旧大蔵省(現財務省)に銀行や証券会社が置いた担当者のこと。MOFは大蔵省の英語名、Ministry Of Financeの略称です(金融庁は、Financial Services Agency)。日常的に大蔵官僚と接触し、大蔵省の検査日程などの情報収集が任務。破廉恥な接待などが問題となり、1998年に同省の金融検査部の幹部2人や証券局の課長補佐ら2人が逮捕される事件に発展しました。





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