2011年1月29日(土)「しんぶん赤旗」

衆参代表質問 展望示したのは どの党か


 菅直人首相の施政方針演説に対する衆参両院の代表質問が28日、終わりました。経済危機、TPP(環太平洋連携協定)、消費税増税と社会保障、沖縄米軍基地―など内政・外交にわたる閉(へい)塞(そく)感打開の展望を示したのはどの党か―。「解散」「闘う野党」など勇ましい言葉が飛び交うなか、菅内閣と真に対決できるのはどの党かが浮き彫りになりました。(国会取材団)


消費税

共産党 増税に頼らぬ道筋示す

民・自・公・み 増税へ“翼賛”体制

 菅政権は「税と社会保障の一体改革」の名で消費税増税を打ち出しています。

 消費税増税に前のめりになっている菅政権にきっぱりと対峙(たいじ)して、増税反対と、消費税に頼らずに社会保障を充実させる道筋を打ち出しているのは日本共産党だけでした。

 志位和夫委員長は27日の代表質問で「社会保障を切り捨て、他方で大企業の減税をばらまきながら、消費税増税など論外というほかない」と厳しく批判。「いま、とりくむべきは、社会保障の拡充に転換することだ」と訴えました。

 市田忠義書記局長も「財源というなら、ゆきすぎた大企業、大資産家減税をやめ、税金は負担能力に応じて払う、『思いやり予算』など軍事費を削る、税金の山分けである政党助成金を廃止する。こういう方向こそ追求すべきだ」と提案しました。

 自民、公明両党は、菅政権に対し消費税増税をあおり、競い合う姿勢を見せました。

 自民党の谷垣禎一総裁は消費税増税への「本気度」を首相に問い、「(増税法案は)今秋の臨時国会に提出されるのが当然だ」(26日、衆院本会議)とあおりました。その上で、解散を条件に、消費税増税にむけた与野党協議に参加する意思を表明しました。

 公明党の井上義久幹事長は「公明党は、消費税を含めた税制の『抜本改革』は必要との立場だ」(27日、衆院本会議)と明言。「与野党の協議機関を立ち上げよ」と迫りました。

 みんなの党の渡辺喜美代表は、「消費税を全額地方の財源にすれば、補助金、交付税はその分少なくできる」(同)と主張しました。

 菅首相は、消費税増税を盛り込んだ自民党提案の「財政健全化責任法案」を評価。公明党の「新しい福祉社会ビジョン」を「共感する」と持ち上げました。

 消費税増税で共鳴し合う“翼賛”状況ともいうべき事態です。

TPP

共産党 自給率向上と両立せず

民主 「開国」一辺倒 自・み “本音”隠し

 菅首相が「平成の開国」と称して参加を狙う環太平洋連携協定(TPP)。「開国」推進の質問や推進の本音を隠した質問が続くなか、日本共産党はTPPの中身を批判し、正面から反対を表明しました。

 志位委員長は、TPP参加は実質的に“米国との自由貿易協定(FTA)”となり、農業だけでなく、経済主権を米国にゆだねることになると指摘。食料自給率は政府試算でも13%に急落し、政府の50%目標との両立は絶対不可能であり、「農林水産業、地域経済、国土と環境を破壊し、国民への食料の安定供給も破壊する『亡国の道』だ」と批判しました。

 菅首相は、自給率向上と「両立」不可能との質問に、まともに答えられませんでした。

 TPPには「自民党も前向きに考えるのが基本だ」といっていた谷垣禎一総裁ですが、一言も触れずじまい(26日、衆院本会議)。加盟反対の世論の高まりのなかで、いっせい地方選を前に“TPP隠し”に終始しました。

 公明党の井上義久幹事長も27日、農林漁業者の「懸念と批判」に触れたものの、破綻した「大規模化」をはじめ、自公政権以来の農業「構造改革」を主張しました。

 「みんなの党は、開国大賛成」(渡辺喜美代表)、「国政の政党では唯一、TPP参加を明言している」(江田憲司幹事長)と“自慢”していたみんなの党も、渡辺代表が一切触れずじまい(27日)。川田龍平政調会長代理は、交渉の「情報公開」を求めただけでした(28日)。

日米同盟

共産党 「戦争力」より「外交力」

民主 軍事偏重 自民 軍拡あおる

 昨年5月の「日米合意」に基づき沖縄・名護市辺野古で米軍の新基地建設を推進し、新たな「防衛計画の大綱」が定めた「動的防衛力」の名で自衛隊の海外展開を狙う菅政権。

 日本共産党の志位委員長は、「『県内移設反対』『普天間基地の閉鎖・撤去』という沖縄県民の総意はもはや揺らぐことはない」と述べ、「日米合意」白紙撤回と米軍普天間基地(宜野湾市)無条件返還を迫りました。

 志位氏はまた、尖閣諸島、朝鮮半島、千島列島―どの紛争問題でも、国際的道理に立った外交交渉をせず、自衛隊の変質を狙う新「防衛大綱」を策定し軍備増強を進めようとしていると菅内閣を批判。「対米従属、軍事偏重、外交不在こそ日本外交の姿」だと指摘しました。

 また、「必要なのは軍事同盟という『戦争力』でなく、国際的道理にたった『外交力』だ」と主張しました。これに対し民主議員は「『戦争力』でいいのだ」とヤジを飛ばすなど、自民党と変わらない姿をさらす場面もありました。

 普天間問題について菅首相は、「『日米合意』をふまえ最優先で取り組む」と強調。日米同盟が「日本の安全保障と外交の基軸」だとして「能動的に取り組む外交・安全保障政策の推進が不可欠だ」と開き直りました。

 自民党は、軍拡路線をさらにあおり、より右傾化を迫る立場を示しました。小池百合子総務会長は26日の質問で、「動的防衛力」は「自民党時代にわれわれが方向性を打ち出したもの」と指摘し、防衛関係予算の増額を要求。スパイ防止法や「軍法会議」の必要性にも言及し「情報保全体制の強化」も求めました。中曽根弘文参院議員は「憲法改正に向け議論を行っていくべきだ」(27日)と迫りました。

 公明党の山口那津男代表は、「日本外交の基軸は日米関係だ」(28日)と菅首相と同じ認識を示しました。

共産党 暮らしの問題 正面から取り上げ

 庶民の暮らしは所得の低迷にあえいでいます。ところが民主、自民の「二大政党」とも代表質問で、暮らしの問題についてはまともに取り上げませんでした。

 こうしたなか、日本共産党の志位和夫委員長と市田忠義書記局長は、雇用情勢や暮らしの問題、中小企業の営業の問題を正面からとりあげ、具体的な打開策も示しました。

 志位氏は、労働者派遣法の抜本改正によって、低賃金で不安定な非正規社員を正社員にすることなど、総合的な賃上げ政策を提案。市田氏は、中小企業の経営を守るためのルールの確立や最低賃金引き上げのための財政支援を求めました。





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