2011年1月27日(木)「しんぶん赤旗」

老齢加算 政府元専門委員ら「復活すべきだ」

「廃止」だけつまみぐい


 生活保護の老齢加算を廃止するよう提言したとされる厚労省の専門委員会の元メンバーらが、廃止後の現状を憂慮する発言をしています。

 問題の「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」は2003年8月、厚労省・社会保障審議会福祉部会のもとに設置されました。社会保障予算を毎年2200億円削減する路線をしいた自公政権の閣議決定を受けたものです。

 専門委員会は、生活扶助基準のあり方を本格的に検証するふれこみで開かれました。同年12月、中間報告をまとめ老齢加算の廃止を提言したとされます。即座に国は翌年度から老齢加算を減額、06年度には完全廃止しました。委員会は04年12月に報告書をまとめ、任務を終えました。

 専門委員会の当時の委員は岩田正美委員長(日本女子大教授)以下12人で、取材に応じたのは5人。元委員らは、加算が廃止された70歳以上の受給者の生活について「裁判をしなければならないほど厳しい状況」を憂慮。「研究者の良心からして、政府が老齢加算を廃止したことについて、じくじたる思い」を語りました。

 中間報告は、単純に老齢加算の廃止を提言したわけではありませんでした。加算の廃止と同時に、保護基準全体を改善して、高齢の受給者の生活レベルを加算がなくても維持できる代替措置をとるよう提言していました。

 ところが、国は廃止だけ「つまみぐい」し、いまだに代替措置をとっていません。

 元委員の一人は「その結果、…最低生活が保障されていない。このような事態は放置されるべきではない」と述べています。

 また、過半数の委員は老齢加算の廃止に反対や異議を唱え慎重な態度を委員会でとっていたことが、今回の取材で改めて確認されました。

 いま、老齢加算廃止の取り消しを求め全国9カ所で生存権裁判が争われています。原告の訴えを退けた東京地裁や同高裁の判決は、専門委員会が「廃止の方向で合意」「全員一致で承認」などと認定し、国の加算廃止を正当化しています。元委員らの話は、それら裁判所の判断とまったく食い違っています。

 一方、福岡高裁は昨年6月、中間報告が提言した代替措置も激変緩和措置も検討することなく国が老齢加算を廃止したことについて、違法と断じました。

 また、今回の取材で国が廃止の論拠とするために専門委員会に示したデータなどについて批判する委員が複数いました。この国のデータをもとに原告敗訴とした各裁判所の判断が問われます。東京と福岡の訴訟は最高裁に移っており、その審理が注目されます。





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