2011年1月20日(木)「しんぶん赤旗」

主張

嘉手納爆音3次訴訟

「静かな夜」の願いにこたえよ


 沖縄の米空軍嘉手納基地周辺の住民が、米軍機の夜間・早朝の飛行差し止めを求めて、3月に第3次爆音訴訟を起こします。

 原告数は、1次訴訟の906人、2次訴訟の5540人をはるかに上回る2万人超となるのは確実です。原告数が大きく増えたのは、米軍機の爆音が「受忍限度を超える」と裁判所も認めているのに、爆音被害を放置している政府への怒りが一気に噴き上がっていることを示しています。住民が撤去を求めている普天間基地の爆音被害も我慢の限界を超えています。飛行差し止め要求が県民の総意になってきているのは明らかです。

米本土では許されない

 嘉手納基地では、基地の常駐機だけでなく外部から飛来する外来機が住民を爆音で苦しめています。原告は、嘉手納町、北谷町、沖縄市、うるま市(旧具志川市、石川市)、読谷村の周辺市町村のなかでも、爆音が「受忍限度を超える」と裁判所も認定した「うるささ指数」75以上の地域に住む住民です。

 住民は、間近で鳴らされる自動車の警笛と同じ大きさの爆音のため、テレビも電話も聞こえない、寝ている子どもが目を覚まして泣きやまないなど、生活が根底から破壊される異常な状況におかれています。教育現場も深刻で、基地に近い嘉手納中学校では校長とPTA会長が連名で、「学校の安全と静かな学習環境の保障を求める」陳情書を嘉手納町議会に提出する異例な事態もおきています。

 とりわけ夜間・早朝の飛行は深刻で、楽しいはずの夜の家族の会話やだんらん、勉強を妨げ、睡眠も妨害します。爆音は県民を人とも思わない非人道的な蛮行の結果です。こんな理不尽な飛行は米本国では許されません。米軍の「不条理」を追及するのは当然です。

 米軍は1995年の「沖縄少女暴行事件」の翌年の日米合同委員会合意で、「できる限り早く夜間の飛行を終了させる」と約束しました。しかし守ったためしはありません。日本政府が約束違反に抗議もせず、容認する姿勢をとりつづけているからです。

 2万人を超す原告が、これまでの判決で退けられてきた夜間・早朝の飛行差し止めを改めて求めるのは、なんとしても生活と安全を守りたい一心からです。せめて夜間・早朝の飛行だけでもやめさせて、「静かな夜」を実現したいという県民の願いにこたえるべきです。

 憲法は戦争を放棄した9条と、13条の幸福追求権、25条の生存権が一体となって、国民に「平和のうちに生存する権利」(前文)を保障しています。嘉手納基地や普天間基地の周辺住民の訴えを真摯(しんし)に受け止め、少なくとも、夜間・早朝の飛行差し止めを実現することこそ、政府の責務です。

飛行中止の対米交渉を

 菅直人・民主党政権がもちだしている米軍機の一部グアム移転訓練は爆音被害の軽減にはなりえません。移転訓練が新たな訓練機の飛来を招き、爆音被害の軽減どころか増大にしかならないのは、本土への移転訓練で証明されています。移転訓練の狙いが普天間基地の名護市辺野古「移設」につながっていることも重大です。

 政府がやるべきことは基地の存続を画策するのではなく、2万人もの住民が願う夜間・早朝の飛行中止を実現することです。民主党政権の姿勢が問われています。





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