2011年1月8日(土)「しんぶん赤旗」

主張

前原外相訪米

「同盟」なら何でも許されるか


 前原誠司外相が年明け早々の6日訪米し、アメリカのシンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)での講演やクリントン米国務長官との会談をおこないました。

 まだ松も取れないこの時期の訪米は、対米従属をあらわにする民主党政権の姿勢を浮き彫りにするものです。前原氏が、環太平洋連携協定(TPP)への参加を「日米関係強化の一環」と位置づけ、米軍普天間基地の「移設」を「日米同盟の機能を損なわないように」と明言したことは、国民の利益よりアメリカの利益を優先する、この政権の危険な性格を浮き彫りにするものです。

アメリカのご機嫌取りに

 前原外相の訪米は、今春予定の日米首脳会談に向けた「共同声明」づくりのためといわれています。日米両政府は昨年、新しい「安保共同声明」を発表する予定でした。ところが、日米両政府が約束した普天間基地「県内移設」の合意が県民の反対で一歩も進まず、「共同声明」の発表は今年に延期されています。前原氏の訪米はアメリカのご機嫌をとり、政権延命を図ろうという卑屈なものです。

 本来、国民の利益を第一とする独立国の政府なら、普天間基地の無条件撤去を求める県民の意思を代表して、アメリカと交渉すべきなのに、それさえしないでご機嫌さえとれればいいなどというのは、独立国の政府のとるべき態度ではありません。前原氏は講演で、「日米同盟は…アジア太平洋地域の公共財として…死活的に重要」などといいますが世界は日米同盟だけで動いているわけではありません。日米同盟にしがみついてさえいればというのは、世界に通用しない古い考えです。

 しかも前原外相の講演が、日米同盟のためには国民の犠牲もかえりみない態度をむきだしにしていることは、とりわけ重大です。

 前原氏は、政府が参加を決めようとしているTPPについて、その意義は経済的にだけでなく政治的にも大きく、「私はこれを日米関係強化の一環として位置づけています」と明言しました。TPPへの日本の参加は、日本の農業を壊滅させ、国のあり方そのものを変える大問題です。「日米関係強化」のためだからそれを受け入れろという前原氏の主張は、文字通り「日米同盟」のためには日本の農業も国民の暮らしも犠牲にするというに等しい宣言です。

 前原氏は普天間基地問題でも、県民が求める無条件の撤去ではなく、辺野古「移設」を再確認した「日米合意」を実行するとくりかえし、「日米同盟の機能を損なうような事態を招かないようにすることが重要」と主張します。まさに、「県内移設」を受け入れない県民・国民への脅しそのものであり、県民を脅迫してまでアメリカとの約束を果たそうという態度は絶対に許されるものではありません。

日米同盟の是非を問う

 大国だけでなく、発展途上国や新興国が大きな力を持つようになった今日の世界は、軍事力と軍事同盟で対抗するのではなく、外交で平和を切り開いていくことこそが大勢になっています。「日米同盟の深化」といえば国民に犠牲を押し付けることができるような考えはもはや通用しません。

 前原氏が「日米同盟のため」というなら、同盟そのものの是非を問う国民的議論がまぬがれません。





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